[コメント] いま、会いにゆきます(2004/日)
ストーリの面白さについては、原作がベストセラーを記録したという事実もあるし、早くも語りつくされた感があるので、この際、ずばっと省略してしまおう。
この映画版の勝利は、何と云ってもその絶妙なキャスティングセンスに起因する。
主人公・巧に、如何にも庇護欲を誘うような軟弱な美男子ではなく、むしろその対極のイメージを持つ中村獅童を配した、制作サイドの慧眼に、ただただ頭が下がる。
実は、中村獅童には、特に最近の彼の活動ぶりには、クボヅカと同じような、空疎な空回り感を感じ、こいつももう終わりかな、なんて勝手に思い始めていたのだが、この映画は、それが俺の単なる勘違いであったことを、嬉しくもまざまざと証明してみせてくれた。
竹内結子の起用については、先んじて作られた同系作品への、宣戦布告という意味合いも含められているのだろう。作り手の確固たる自信というものが窺える。彼女は、(俺はTVは殆ど見ないので良く知らないのだが)未だにTVドラマ向け女優だとかいうレッテルを貼られているようだが、どこがそんな悪いのか判らないくらい、感情表現の上手な女優さんだと思う。最近のタレントにありがちなバカっぽさもないし、若いのに母性さえ感じさせる、稀少な存在である。
そういう二人の青春時代に、更に若い別の俳優を起用している点も見逃せない。巧の高校時代を演じた、名前は知らないが、男優君も、澪の高校生時代を演じたちょっと丸顔の女優さんも、良く観れば全然違うのかもしれないが、けっこう納得性があって、無理して変な若作りされるよりも、すんなり受け入れることが出来た。ドラマに集中することが出来たのだ。
松尾スズキ・小日向文世の二大中年も味付けとしては申し分ないし、YOUの「映画的アゲマン」ぶりを再確認することも出来た。
ホント、完璧な配役である。
土井裕泰監督の、奇を衒わない、押さえの効いた、それでいて観客に様々な種類の緊張感を強いてくる演出にも非常な好感を持った。何気ない台詞や行動が伏線として機能するためには、ただそれが発せられ、為されるばかりでは駄目で、それが観客の印象に強く残ることが必要なのだが、その点この監督の空気醸成は見事で、伏線たるべきシーンのそれぞれが、単体でも充分に観客を魅了するような、美しさと切なさと、愛らしさに満ち溢れていた。今、日本の小説業界ってのは、ある意味映画以上に盛り上がっていて、実際面白いのたくさんあるから、土井監督のような丁寧な演出家がどんどん出てきて、どんどん映画化してくれれば、日本の未来ってホントに明るいと思う。
それにしても、凄いよな、最近の邦画。続々と新しい才能が出てきて。ほんと面白いです。俺ね、嬉しくて堪んないですよ、いま。来年も早々から、観たい映画、たくさんあるしね。
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