[コメント] ピンク・フロイド/ザ・ウォール(1982/英)
とあるロック批評家はこの大ヒット・アルバム/映画を「陳腐」とバッサリ切り捨てているが俺も全く同感だ。
「壁」という哲学的なテーマで繋がれたイメージの船頭役に、”ロック・スターとファンの間の壁”という安直かつMTV的な物語しか産み出せなかったロジャー・ウォーターズは明らかにこの頃迷走していた(*1)。俺はこういうのを詩とは認めないし、きっぱり「ダッセー」と切って捨てる。詩がなければピンク・フロイドに非ず、すなわち『ウォール』は’俺にとっての’ピンク・フロイドのアルバムでは無い。
シド・バレットのイメージを再生産して荒稼ぎしようとする根性も全く以ってケシカラン。アラン・パーカーの『バーディ』は嫌いではないが。
だから、これはティーン向けのロックンロール映画(*2)と割り切り素直に楽しもうと心に決めた。アラン・パーカーの映像センスをMTV的に愉しむ映画であり、顰め面から搾り出す高尚(*4)な解釈も読み解きも必要としない笑って済ませられる愛すべきカルト娯楽作であると。
変態芸人アリス・クーパーのプロデューサー、ボブ・エズリンの参加がそれを雄弁に語っている気がする。
(*1)ピート・タウンゼントの『トミー』のパクリではないか。無意識的盗作としてもこれを避けて別のイメージを搾り出すのがゲージツ家の使命である。ソニー移籍後のピンク・フロイドは総じてつまらないが相当ケツに火がついていたのだと推察される。
(*2)ピンク・フロイドの創始者で正真正銘のヒッピーの一人。精神を病んでバンドを脱退、メンバーの助力でソロ・アルバムを制作するも謎の失踪を遂げた。「カメに捧ぐ歌」や「タコに捧ぐ歌」を作った。
(*3)アルバム中最もなキャッチーな「グッバイ・ブルースカイ」でのアニーメーションは確かに素晴らしいが、これが素晴らしければ素晴らしいほどMTVとの類似性が強調されるのだから皮肉だ。
(*4)俺が、このアルバムで唯一ゲージツ的、実質的と思うのがデビッド・ギルモアの情感豊かなギター。それが堪能できる挿入曲「イン・ザ・フレッシュ?」は意匠的には(ザ・バンドの)『ラスト・ワルツ』の「ラスト・ワルツのテーマ」のパクリなんだが、彼のプレイが圧倒的に本物だから全然気にならない。
(@シネフロント渋谷)
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