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[コメント] お茶漬の味(1952/日)

甘辛人生教室。サイレント風味のラストも素敵。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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苦労知らずのブルジョアだろうが、わがままだろうが、口が悪かろうが、他人の思考や嗜好に口を出しさえしなければさほど問題でもないし、むしろ可愛げがあるくらいなのだが、小暮が演じたこの女主人公からは他人の意思を尊重する気持ち−寛容さ−というものが全く欠如しており、自分と異なる他人の行動が全て気に入らないようである。彼女はそういった他人の行動を、ある時はモラル(倫理・礼儀)に鑑みて糾弾したり、又ある時は生真面目さや洒落っ気精神の無さを指弾したり罵倒して、それが反感を勝って孤立したりすると今度は「世の中は間違ってる」とか「誰も私のことを判ってくれない」なんて大袈裟なことを本気で口走ったりする。

彼女のような人間にとって、自らの非を認め、面と向かって相手に謝るなどということは本来、腹掻っ捌いて自害するよりも遥かに難しいことであり、そんな彼女をして涙ながらに懺悔せしめたのは、紛れも無い、佐分利演じる旦那が備えていた、大地のような辛抱強さ、海の寛容さ、そして神々しい優しいまなざし、それら全てであった。

ラスト近くで本人も認める通り、彼女が佐分利のような男に出会えたのは奇跡にも近い幸運だったと思う。一人、二人と友人が離れていく中、いつまでも、そして最後まで<自分を待っていてくれた人>が他ならぬ自分の亭主であったなんて、なんという幸福な女だろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)おーい粗茶[*] けにろん[*] Keita[*]

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