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[コメント] 千と千尋の神隠し(2001/日)

観ました、良かった凄く。「古きを鳴らし、新しきを響かせる」って感じですね。欠点山ほどあっての5点は実は一番良い。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







皆さんのネタバレ・レビューやっと見ることが出来て胸のつかえが取れた思いです。良いですなぁシネスケ!実に様々な意見・解釈があって!<僕>も書きたい事書かせてもらいます。

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★テーマについて

 いきなりだが<僕>はこの映画に明確なテーマは無いと断言してしまう。詩人、童話作家、SF作家、アニメーター(ヤン・シュワングマイエルも含む)というのは「世界の創造主となること、自分の世界を創造すること」に至上の悦びを覚えるもの。宮崎さんにしても描きたい世界観・映像が先にあるわけで、言いたいことが先にあってそれを伝えるためにわざわざ搾り出した世界ではないのだ。意味はあとから足すのである。何か一つに意味(=名)をつけるとそこから連想して新たな何かが生まれる。それにもう一つ別の意味を加えてみる。そこからまた新しく連想する。(この関係は暗喩的だったり逆説だったりもする。作曲と作詞の関係と非常に近い。)『』の宇宙はこうやって広がっていって行く。エコロジー、ファミリー、信頼、恋愛、成長などメッセージも天地創造の副産物でしかない。そしてストーリーもそうだ。

★ストーリーについて

 本作のストーリーは連想に次ぐ連想によってどこからドラッグ&ペーストされた「紋きり」ものの集まりに過ぎないのだろう。だから何処かで聞いたことのある話を「そこでこれを持ってくるか」みたいな楽しみ方が出来るとラク。勿論、子供らしく純粋に「知らんかった初めて聞いた感動した」みたいのもOKでしょうが。

★ディティールの読み解き

 こういう映画からこういう愉しみ方をとったらお楽しみは半減だと思うんだが、何をもってか「止めよ」「無駄だ」とのお声が頻繁に掛かる。いったいなんで?まぁ僕みたいに読みたい奴だけが勝手に読んで自己満足してればいいんでしょう。

〜ハク、リンの名前はカナ表記〜

 ハクの字、誰もが「白」と感じたことだろう。(あるいは不幸そうだから「薄」?狛犬の「狛」?「吐」?「箔」?) ハクの本性は竜だった。

  ☆竜は水神、海と河の神・精霊であり特に海のものを中国では「河伯(カハク)」と呼ぶ。

  ☆白竜を朝鮮半島の守護神とする信仰もある。(これらは『』のアジアな情緒とマッチする)

  ☆ハクの本名は「琥珀川」の主「饒速水琥珀主(ニギハヤミコハクヌシ)」(*多分こんな感じ、意味は「皆を豊かにしてくれる琥珀河の水神」といったところ)といって神道系だ。

 この「伯」=「白」=「珀」(…他多数)といった複数のイメージが共存する曖昧さ・神秘性は様々な文化の混交によって成立した日本語の最大の美点であると思う。宮崎さんが伝えたかったことが仮にあったとしするならばむしろこういうことではないか?

 そういえばハク同様、「腐れ神」も河神だった。彼が没落したのは河川の汚濁が主な原因だったけど、これちょっと恥かしいメッセージっすね<大人>には。某有名RPGに「臭い息」を吐き出すモルバルという怪物が登場するんだけど、これはあからさまに女陰の形をしていてインパクトが強烈だった。腐れ神にもそんぐらいのインパクトが欲しかったとは僕も思った。

 尚、「リン」は「凛」とした性格を持った「隣」で寝る少女である。打ち捨てられた「鈴」か「輪」の変化(ヘンゲ)かもしれない、とか想像するのも愉しい。

〜神と精霊と妖怪〜

 記紀神話(記紀=古事記&日本書紀)によれば天孫降臨によって追われた日本の古代の神々(これを国津神(クニツカミ)と呼んだ)はその神通力を失い妖怪や精霊、土蜘蛛(*凶暴なせむし男もしくは人面の蜘蛛で描かれる。天皇反対勢力の別称ともされる。)に身を落としたという。もろ土蜘蛛の姿の「釜爺」は勿論、皆さんのコメントにもあるように「湯婆婆」も(そのジキルたる「銭婆」も)没落した地方神なのだろう。

〜こんなところに陰陽道〜

 そういえば銭婆が魔法のはんこを盗んだハクを追わせていたのは「式神(シキガミ)」である。これは陰陽道の修験者が使う一種の護符で、それを鳥に化けさせて敵地を偵察する他、鬼に化けさせて相手を暗殺(=呪殺)したりする。安部清明もこれの名人だった。

〜魔法のはんこの重要性〜

 はんことは元来「認可・認識」するためのもの、「意味」を成立させるための大切な道具である。「はんこ」であることが重要なのであるから、その用途については語る必要がない。「名」と「契約」の価値を重要視する『』の世界のシンボルといえる。

〜水域のはなし〜

 この映画は「水」に関する話題を多く取り扱っている。古来から水域というのは畏敬を持って扱われてきた。油屋の前には大きな橋が掛かっており、それを「渡る・渡らない」の問答が交わされていたが、「こち亀」の両さん曰く「昔は橋を渡ればそこは別の国」だそうだから、あれも異界への境界の一つだったのだろう。

 「油屋」は「湯屋」と対句的だが実態は水を扱う「銭湯」であり、男従業員はみな水辺に住む蛙男である。そういや蛙は両性類。水陸両用であるからしてこれまた意味深である。ヤモリだかイモリだかが好きなんだっけね。一晩でも雨が降るとすぐに増水、浸水してしまう「常識」は『』の世界が「陸上と水域の境目」に存在していることを示唆している。

 千尋が電車で会いに行った銭婆が住んでいるのは「沼の底」。おいおい西部新宿線じゃないんだからと思う暇も無くそこは字義通りの「沼の底」だった(ハズ)。そして驚いたことにまだ先があった!「底」なのに終点ではないのである。その先はヘドロか?地獄か?

 らいてふさん等のコメントにもあるような銭婆・湯婆婆の同一神説には僕も賛成。ただ僕は上記との関連で「銭婆は<沼>の水面に映った湯婆婆の影である」という解釈ができるということを付け加えておきたい。

 ところであの最初の白いお客さんはなんでしょうね。大根のお化け?

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うーん、他にも書きたい事があったはずなのに忘れてしまった。でもハクの

「一度観たら忘れないよ。忘れたんじゃない、思い出せないだけさ。」

これは忘れられない名台詞だなぁ。

って、これがテーマじゃねぇか!前言撤回!

(評価:★5)

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