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[コメント] 狂った野獣(1976/日)

前半はテンポ良く非常に楽しめるのだが、中盤から終盤に指しかかる当たりは、車外から撮ったカークラッシュ場面ばかりで正直飽きる。ラストももう一つ足りない。主人公の<BIG AWAKE>が欲しかった。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







BIG AWAKE。大いなる目覚め。「悟り」とも「開き直り」とも言い換えられる。この映画のラストシーンにはそれが足りない。だから、とても尻すぼみな映画になってしまった。『バニシング・ポイント』に「加速する映画。」とコメントしたが、この「狂った野獣」は、残念なことに、失速する映画だ。

ラストシーンで海に飛び込むというアクションは、ゴダールの有名作にしても、幾つかの野坂昭如原作映画にしても、観る者に”居直りの開放感”、そこから転じる”未来への希望”みたいなものを抱かせてくれるものだが、この映画には残念ながらそれがなかった(*)。

カークラッシュ場面を少し裂いて、早めにバスを停車させ、渡瀬と恋人星野じゅんの、過去はあれ以上描かなくていいので、その後の逃避行か何か、を足してくれれば良かったのだが。

勿論、アクション映画だからそんなモノいらない、という意見も判る。しかし、それなら星野じゅんとのロマンスなどはじめっからバッサリと切って欲しかった。要は中途半端なのだ。

コメディ、パロディとして一級品であることは間違いない。ジャックされたバスの中にちんどん屋を置いて突然エレジーを演奏させるセンス、なんてのは正気の沙汰ではない。バスに乗り合わせた乗客の個性こそがこの映画最大の魅力だろう。

広瀬健次郎の音楽は、ファンキーで楽しいが、明朗快活過ぎて少し違うかな、とも思った。

*BIG AWAKE、という言葉に俺は、根拠もなしに拘っているわけではない。バスの目的地はずっと「大覚寺」行きになっていたし、ラストで三上寛も「目を見開いて〜♪」と歌っている。中島が「それ」を描こうとしていたのは明らかなのだ。描こうとして、描けていないこと、表層のみで終わってしまったことが問題なのである。

(評価:★4)

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