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[コメント] バーバー(2001/米)

コーエン・ロジック。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







バーバー』は紛れも無く21世紀最初の大傑作であると思う。

●The Man Who Wasn't There =心此処にあらず

物語はビリー・ボブ・ソーントン演ずる床屋エドの独白によって展開する。だから彼以外の登場人物は皆彼の主観に基づいて戯画化され、それはその人物が彼と身近になればなる程誇張される。

風呂で雑誌から目を離さずに「愛しているワ」とのたまう妻や、お喋りな義弟、虚勢を張る妻の不倫相手に、そのちょっとアレな奥方、カツラを被った詐欺師に、傲慢不遜な弁護士。「お礼」をしてくれるピアノ少女。

笑いは狙っているがそれだけではない。この渇いた笑いがエドの孤独感を際立たせているのである。

コーエン兄弟の演出は実に論理的である。

●The Man Who Wasn't There =実際にはそこに居なかった男

サスペンスとしての完成度が非常に高い。あらゆる伏線が完璧に回収されており一切無駄が無い。ドライクリーニングの詐欺師が恐喝事件に介在した証拠が無いが為に疑われたエドの妻。介在した証拠が水中から発見されたことで逮捕されたエド。さらに別の実際には居なかった男を捏造してエドを弁護する弁護士。

●The Man Who Wasn't There =幽霊のような存在

妻、弁護士らと交された哲学的な問答。その後彼が辿った運命。死刑に際して彼は「後悔はしていない」という。それは彼がほんの一時でも自己の存在を証明できたからだろう。

●The Man Who Wasn't There =バーバー

映画『バーバー』を世紀の傑作たら占めている類稀なる映像センス。車がゆったりと宙を舞うシーンのインパクトときたら。外れた車輪、逸脱した彼の人生の象徴が転がる様は故宮川一夫大先生の『無法松の一生』を、電気椅子の部屋の純白の世界は鈴木清順の映像美学をそれぞれ彷彿とさせコーエン兄弟の並々ならぬ拘りを感じさせる。

バーバー』は紛れも無く21世紀最初の大傑作であると思う。

(評価:★5)

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