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[コメント] ピンポン(2002/日)

男たちの万有引力。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







橋の欄干に立つペコさんの台詞。 「俺は空を飛ぶんだ。月にタッチするんだ。」

「月」は勿論、月本(スマイル)を暗示しているはず。 この台詞は前後2回、印象的に使われていますが、 自らスターと言ってはばからないペコさんの、 無意識的願望を顕す台詞として興味深い(=意義深い)です。

またペコさんの台詞。 「この星で一番になってやる。」

この星、は勿論ペコさんです。 ペコさんの存在は、どこぞの恒星、輝くスターと同時に、 僕等が立ってるこの地球をも包括しているようです。

正反対の性格を備えたペコさんとスマイルは、互いに影響を与え合っている。 互いに引かれ合っている。互いに待ち焦がれている。引力です引力です。

**(追記:2002年11月30日) 谷川俊太郎の詩にこういうのがあるそうです。 「万有引力とは、引き合う孤独の力である。」

これ受けて寺山修司は呟きます。 「ならば、大地ほど孤独なものは存在しないことになるだろう」

そして僕は納得するのです。 「そう、一番孤独なのはペコさんなのだ」**

ドラゴンは二人に次ぐ第三の存在です。 彼の苦悩・孤独・渇きを「井の中の蛙」と笑うことは簡単でしょう。 実際そうかも知れません。 しかし、彼が最期に得た至高の喜びを否定する事ができるでしょうか? 内なる喜び。至福。いいじゃない。

自らの才能の限界を知って、 応援することの喜び、スポーツ観戦の醍醐味を悟る 凡人・アクマと、全く蚊帳の外のカノジョの描写もいいじゃない。

自分のために、自分だけを大切にと唱えながら 結局は他人からの影響を脱しきれない 現代個人主義の限界を示唆する傑作脚本。

スーパーカーらの無機質で透明感のある音楽を、 白を貴重としたイメージとシンクロさせたセンス。

―面白い構図を見せたい― 目的意識の明確なCG。

これはびっくりするくらいいい映画ですね。 マジでびっくりしてしまいました。

(評価:★5)

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