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[コメント] ギャング・オブ・ニューヨーク(2002/米=独=伊=英=オランダ)

アイリッシュ・ハートビートは届いたか。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ディカプリオとデイ=ルイスの間で繰り広げられるドラマが、語り飽かされた古典的なものであったことが罪なのではなく、そこに流れを生み出せなかった場しのぎ的な演出に問題がある。民族闘争から階級闘争への展開は見事だし、時代考証にも力を注いだのだろうが、やはりドラマを忘れてしまってはいけない。

ディカプリオの友人がデイ=ルイスに彼の正体を告げ口する動機は、惚れた女に選ばれた色男ディカプリオへの嫉妬であったはずだが、もうワンシーンあればあの友人の人物像が膨らみ、その後の暗殺のシーンで生まれるカタルシスも倍加したであろう。スコセッシは『タクシードライバー』の初心に却りもう一度東映京都産仁侠映画を見直し義理と人情の葛藤について学びなおすべきである。

配役に関して言うと、これまで生粋のアイルランド人を演じてきたデイ=ルイスがプロテスタントの英国人として登場し、ジェームズ・キャクニーに似ているからキャスティングされたものだと信じ込んでいたイタリア系ディカプリオがアイルランド人ってのが、無知な日本人である俺なんかには相当紛らわしかった。

ディカプリオが貧民街ファイブ・ポイントを出歩くときに挿入される音楽は、最近では『オー・ブラザー』でも使用されたアラン・ロマックス録音の街頭ブルースであったが、これは1848〜60年代という時代設定に余り相応しくないように思える。U2の主題歌は大袈裟なだけで最悪の出来だがアイルランド民謡に取材したスコアや劇中曲は魅力的で流石エルマー・バーンスタインが関っただけはあると云った感じだ。

確かに力は篭っているが、もう一度見ろといわれたら金を払ってでも勘弁して頂きたい歴史耐作。

(評価:★3)

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