力作、しかしアンバランスな部分が目立つ映画。

オジサン達にあれだけペチャクチャ喋らせるのなら、もちっと「あさま山荘」の現場にそのパワーを向けようとは思わんのだろうか？警察と赤軍派の攻防がどうも見応え薄くてのんびりしてるのは、この映画の「突入方向」がズレまくっているからに他ならない。

要するに「あさま山荘」には突入せず、会議室に「突入」しちゃってるのね、この映画・・・

実際、ああ言うくだらない縄張り争いが当時確かにあったんだろうし、それを中心にした警察内部の人間模様を描くのがダメだとは言わないけど、テロリストと警察の息詰まる攻防戦を期待して肩透かし喰らった客も少なくはなかろう。それを思うと、これはホントにエンターテインメイント映画なのかなぁ？とさえ思うのだが・・・ヘラクレス佐々に迎合し、頭の上がらないスタッフの姿が目に浮かびそう。

本番の「突入」シーンは確かに迫力ある、凄まじい修羅場、圧倒される。でも何をやってるのかわからんッ！どこへ行こうとしてるのかわからんッ！何を言ってるのかわからんッ！誰が誰だかわからんッ！何が何だかわからんッ！（笑）。...いや実際、指揮系統が錯綜し情報は混乱を極めた現場は「わからんッ！」事だらけだったんだろうけど....でもさ、客に見せる映画として「見にくい、聞きにくい、わかりにくい」ってのはどうなのよ、それ？

登場人物の「生活臭」が実にリアリティ溢れる描写で描かれている。これが原田監督、一番の得意分野ではなかろうか。まくら廻しは修学旅行でハシャぐ学生のノリ。朝飯食う時に大便の話。歯磨きしながら放屁。オシッコ漏れそうな本部長etc....リアルなオッサン臭をこれでもかと撒き散らす。大事件の渦中でも決して人間らしさを忘れない警察官たち。いや、忘れられなかったんだろうな・・・未曾有の出来事、警察内部のいがみ合い、赤軍派の得体の知れない態度、批判タラタラのマスコミ、とてつもないプレッシャーから少しでも解放されるために、日常の何でもない事を語り合い、面白おかしく行動する。少なくともヘンだとは思わないし、人ってそんなもんだと思う。ただ、ヘラクレス佐々がヤカンの熱湯ぶちまけながら発狂するシーンはやりすぎッ！クドいわッ！（笑）リアルにも限度があるんじゃあないかと.....

スコットランド調の音楽は耳に残るが、画と噛み合ってない部分多し。

監督の息子、売れない役者オーラ全快。

悪い映画じゃないけど、前作『呪縛』の方が好み。

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THE CHOICE OF SASSA／ヘラクレス佐々の選択

七難八苦の道ばかり選ぶ英雄は奥さんに足を洗ってもらわないと歩けないらしい。

苦労はわかるが、男としてカッコ悪いなぁと思った。

キミ、ちょっと、レビューでたびたび挙がるマイケルマン『インサイダー』を１００回見てこいや。