[コメント] ミリオンダラー・ベイビー(2004/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
フランキーは愛する人を苦しみから救うためとはいえ、自らの手でマギーを殺す。
マギーは結局チャンピオンになることが出来ずに、苦痛に満ちた短い人生を終える。
こういう誰も救われないラストって嫌いじゃないし、アメリカ人が一番ブーイングをかましそうな感じがしましたけど、この作品にアカデミー賞を贈ったことはものすごい英断だと思います。
しかし、緻密に描いている部分と荒っぽく描いている部分にギャップがありすぎて作品にのめりこめません。
フランキーがスクラップを失明させてしまったことに対して30年もの間、負い目を抱えている描写はとても繊細です。チャンピオンになる素質を持つ愛弟子を必要以上にタイトル戦から遠ざけようとしたり、マギーを筆頭とする資質のない者に対する冷たく突き放した姿勢などなど、さすがにイーストウッドの堂に入った演出が見られます。
逆に荒っぽさが一番顕著に現れるのがボクシングシーンです。あのパンチングボールの叩き方に代表される練習シーンはものすごく丁寧かつ細々とした演出が図られているのに、実際の試合に入ったら完全に劇画調に変化します。
対戦相手が全くディフェンスしてないかの如き吹っ飛び方、プロレスと見まがうほどの露骨なひじ打ち、ラウンド終了でゴングが鳴っているのにラビットパンチまがいの奇襲攻撃、敵陣から買収されているのかと勘ぐりたくなるようなジャッジの無能ぶり。
フランキーとマギーの結びつきをより強固に観客に印象付けるためとはいえ、マギーの家族の描き方も悪辣すぎて興ざめします。マギーが買ってあげた家に対して愚痴ばっかり並べ立てて感謝の一言もないし、ディズニーランド発→病院行きにいたっては失笑してしまいました。世の中に悪い家族はたくさんいるでしょうけど、あそこまでの極悪人はそうそういないと思います。
作品内の波を小さくしてくれれば、近来希に見る秀作になったと思われ。返す返すも残念です。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。