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[コメント] ハリー・ポッターと賢者の石(2001/英=米)

ドラコ「校長先生、聞いてください。担任の先生がハリー・ポッターのことを、えこひいきするんです。」校長「私もハリーのファンなんだよ。きみは減点だあ。」追加レビュー「原作を読んで」原作のネタバレあり(13.12.10)
らいてふ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画をたいへん楽しみにしていたので、原作は読まず、予告にも目をつぶって、まっさらな状態で観た。

良かったところ  (世界観)魔法使い、ドラゴン、魔の森、ファンタジーの王道の世界を楽しめました。『ファイナルファンタジー』もこの線でいけばよかったのではないかと思ったりして。日常生活から抜け出して魔法学校に向う期待と不安感は、学生時代の懐かしい感覚を思い出した。  (役者)個性的で脇役もすばらしい。ハーマイオニ、ロン、ドラコ、失敗ばかりしてる太った子、これこれ、これだよなあ。学園物と冒険物の良いとこ取り。先生たち、とくにスネイプ、猫おばさん、校長がGood!  (ストーリー)プロローグからクライマックスを経てエピローグまで、ミニゲームまで入った豪華なフルコース!

いまいちだったところ  (ハリー)10年育ててくれた養父母に感謝の言葉無く出て行くのはちょっとなあ。全編にわたって、親の威光と周囲のひいき目に助けられることが目だち、本人のがんばりが目立たず。  (先生たち)理由があるとしても、えこひいきな印象強い。スネイプ先生くらいの指導が教育的には望ましい(笑)。  (魔法学校)日常の行動に点数をつけて競わせるというのは、あさましい感じがして楽しくない。点数のつけかたも、すごい主観的だし。あと、特定の寮だけ悪いことしてないのに悪のレッテルはるのも変。  (呼び捨て)字幕ではどうなってるかわからないが、世話になってる大男を子供たちが呼び捨て。使用人とか召使いという感じに聞こえる。「先生」じゃないのはわかるが、「さん」くらいつけたら?日本でも小学校の用務員をバカにする子がいるので、絶対良くない。  (チェス)クライマックスで「友人の命」と「賢者の石」、石をあきらめて、ロンを助けて欲しかった。このへん、原作はもっと緻密な主人公と友人の心の動きがあったはずなのでは?と推察する。  (ミニゲーム)他の選手が死にそうな大怪我をして10点を争ってても、結局シーカーが150点の大量点をとってゲーム終了というのは、ルールのバランスとしていかがなものか。  (寮の表彰)バランスといえば、一年間かけて400点前後を1点単位で争っていた寮の競争。最後に校長先生がにこにこして、170点もの大量点を与えて逆転させてしまうなんて、しどいわ…<緑の寮の子のこころの声。  (結局)観終わったとき、「普通の男の子が苦難を乗り越えて…」というより、「血統正しきサラブレッドが、まわりからちやほやされてお約束どおりヒーローに」という印象が残っちゃった。これじゃいまいち日本的こころに響かないよお。きっとイギリスの名門校の寮生活を知らないと、文化背景として、わかりにくいような点がいろいろあるのかもね。

これらの疑問は、原作を読むと解消できるのかもしれない。正月休みにでも挑戦したい。映画としてはたいへん楽しめたので星4つ。でも原作読んでからあとで星5つに変えるかも、という予感あり。

追加レビュー「原作を読んで」(13.12.10) 

正月まで待てずに、週末、原作を読み終えた。スゴイ。原作が映画を補完したときの満足感は、おみごと。たしかに映画単独では、まあまあがんばってる程度の映画と思われてもしかたがない。しかし、出版界の記録を塗り替えた超ベストセラーだということを考慮して、マルチメディア・エンターテインメントとして判断すると秀逸。原作のファンが映画をほめるのもうなずける。

原作を読みながら映画を思い出すと、ホグワーツの動く絵画と同様に、原作と別売りの「豪華な動く挿絵」が、この映画だったのだなと思えてくる。このように原作とリンクして楽しめるのは、ディテールが忠実につくられているからにほかならない。そして、映画を観た時にいまいちだった点の多くは原作を読んで解消、というよりも昇華された。映画の評価を原作読んで変更することに議論もあると思うが、正直感動したので☆ひとつ加える(やっぱ、えこひいきかも)。

≪ここからは原作ネタバレあり。原作を読んだ人、または、これからも原作を読むつもりのない人だけどうぞ…≫

原作を読む前に気になっていた「えこひいき」の印象は、原作を読み進むうちになくなっていった。それは読んでいる自分が、ハリー・ポッターとグリフィンドール寮のファンになってしまったから。

ダンブルドア校長は、威厳のある偉大な印象だけが強かったのだが、じつは茶目っ気たっぷりのかわいいおじいさんだった。どんな理不尽な裁定でも、「偉大なダンブルドアって、変わってるよな」で納得できる。そしてグリフィンドール出身なんだな、これが。

ハリー・ポッターの両親はすぐれた魔法使いだったが、ハリーへの賞賛は親の七光りではない。ハリー自身がヴォルデモートを打ち負かした事実に魔法界の人々は敬意を払っているのだ。それからホグワーツ入学というのは、養父母との別れというわけではなく、それこそ「学校に行く」というだけの話で、一年たって夏休みになるとまた戻ってくる(実際バーノンおじさんは、ハリーを駅まで迎えに来る)。

ハリーは、たしかに注目されているが、人一倍劣等感も持っている。知識もないし、魔法も得意とは言えない。しかし箒ですばやく動けることが彼を今世紀最年少シーカーに変える。クィディッチにおいて、スニッチの捕獲は非常に難しく、3ヶ月も試合が続くことがあるほど。得失点差を考えて自陣のチェイサーの活躍ぶりを見ながら、どのタイミングでシーカーがダッシュするかというかけひきも必要になる。

子供たちはハグリッドだけでなく、先生たちも普段は呼び捨て。森の番人であるハグリッドとハリーは人と人との大事な関係を築く。その気持ちからくるハグリッドの贈り物にはホロリとさせられる。ハグリッドは自分のミスでハリーを死ぬような目に合わせたと思い、それをつぐなうためハリーの両親の学友を探し出して、両親の写真を集めてきたのだ。

スネイプは、映画で実にうまい描かれ方をしている。演技もよいのだろう。とくにクィディッチの試合中にブツブツと魔法を唱える姿は、最初は憎らしく見えるが、真実を知って思い出すと最高に笑える。彼が在学中、同級生だったハリーの父親を嫌っていたのにもかかわらず、命を救われてしまった屈辱。このサイドストーリーを知ると、映画中のスネイプの表情はさらに何倍も味わい深くなりそうだ。

マルフォイは、映画だとけっこうカッコいいが(笑)、本当はもっと嫌味。ハリーに家族がいないこと、ロンの家に経済的余裕がないこと、ネビルの成績が悪いことなど、その子、その子の弱点ばかりを狙っていじめてくる。スリザリンは過去6年間寮対抗杯で連勝しているが、スネイプが他の寮をこまめに減点していることも効いている。一方マクゴナガル先生は、グリフィンドールを有利にしたい気持ちがあっても、人前だと逆につい厳しい態度に出てしまう。せっかくクィディッチで点を稼いでもハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルの行いで大量に減点。4人の毎日は針のむしろ。とくにネビルは今まで一度だって得点に貢献したことが無い。この辛さがエンディングの逆転劇にカタルシスを生む。

ロンは優秀な兄たちのように、活躍したくてしょうがない。でも勉強も苦手なら、ハリーのようにクィディッチで活躍もできない。唯一だれにも負けないのがチェス。ハリーはおろか、ハーマイオニーでさえも歯が立たない。クライマックスのチェスで、ハリーとハーマイオニーはロンの言うとおりに動かなければ、勝利どころか自分が駒として倒されかねない。ロンは得意のチェスで大活躍のすえ、自己を犠牲にしてチェックメイト=勝利を手に入れる。自分の活躍で最高の栄誉を勝ち取ることがロンの心からの望みであることを、「みぞの鏡」の一件で知っていたハリーには止めることはできなかったろう。もちろんハリーはここにいたるまで、何度も他の二人に戻るようにすすめている。しかし、大人でも恐れるヴォルデモートに立ち向かうハリーの勇気に、二人は心底惚れてついてきたのだ。

ハーマイオニーの魅力は映画でもあますところなく発揮されている。一途で勉強家だけど、生意気で人に弱みをみせない彼女はずっと友達ができなかった。ハリーやロンたちもハーマイオニーを口うるさく感じていたので、喧嘩して彼女が口をきかないことを彼らは喜んでいたくらいだ。彼女はそれを公然と言われ傷つき悩む。しかし、トロールの一件で3人は急接近。高慢ちきな彼女が、たまらなく愛らしいキャラに変わる。ハリーと笛での間接キッスや最期の決戦前の抱擁など、幼いロマンスの予感がちらほら(笑)。

追伸1.「みぞの鏡」

覗いた人の「の・ぞ・み」を写す「み・ぞ・の鏡」。枠に書いてある不思議な文は…。

「すつうを みぞの のろここ のたなあ くなはで おか のたなあ はしたわ」←こちらから

ちなみに 英語だと 「The Mirror of Erised 」 なるほど 「Desire 願望」が隠されている。

追伸2.「スネイプの罠」 vs. 「ハーマイオニーの論理」

クライマックスを盛り上げる各先生の罠で、映画では省略されてしまったスネイプの罠。原作では、ハーマイオニーが見事な論理で破る。しかし残念ながら原作では瓶の配列が示されていないため、読者は謎解きに参加できない。そこで、原作のハーマイオニーの解答から、逆に問題を復元してみた。(これは、論理で解ける二通りの瓶の配列のうちの一つ) あなたはハーマイオニーのように、スネイプの罠を論理で破ることができるか?挑戦者乞う!(下のURLをアドレス入力欄にコピー&ペースト)

http://www.interq.or.jp/red/raitef/html/harry.html

13.12.02 screen 504seats DOLBY SRD 吹き替え

(評価:★5)

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