白雪姫も、オーロラ姫も、見ず知らずの男性にファーストキスを勝手にされちゃうんだったのに、ついに実写のベルは、自分が選んだ男を目覚めさせるためにキスする。ここまで変わったか、とも思うけど、やっぱり主人公の相手はイケメンの王子様であることにはかわりない。少女たちはこういうアニメを見て、自分を選んでくれるのは「イケメンの王子様」であるという未来を当然のように想定しながら大人になる。いま、2020年になっても、女の子は男性に選ばれることに憧れ続けている。男性に選ばれて、その人から常に女王様扱いされるくらい愛されることがプリンセスの条件なのだ。

実写のベルが白雪姫やオーロラ姫と違うところは、野獣が「イケメンの王子様」だということをまったく知らないで、交流していく中でお互いを知り、理解しあい、自分にとって大切な人になっていたことに気づくところ。最終的に、イケメンの王子様に変身しちゃうわけなんだけど、この作品のベルはたとえば左とん平さんとかでも特に気にならないかもしれない(笑)。だいたい、守るべき女性ができたとき、男の人はみんなイケメンに変身するもんなんです！

実写版のベルは、読書が好きで、広い世界に出ていきたいと思っている女性で、独立心旺盛。女は家事だけしてればいい、というような時代に、動物に籠を引かせて洗濯をさせ、その間に読書をするような女性なのだ。しかもそのことで「なまけもの」とののしられる。男の子なら、二宮金次郎みたいにほめられるのにね(笑)。　そんな彼女だから、野獣がどんなに脅かしても、自分の意にそわないことにはNO！と言うし、言いなりにはならない。実写にはたいていがっかりされられるけど、このベルにはエマ・ワトソンがよく合っていたと思う。ラストのダンスシーンでも、アニメでのあの気持ち悪い上目遣いもなく、気持ち悪いまばたきパチパチもなく、のぞまれたからではなく自分の意志でここにいるんだ、というすごく素敵なシーンになっていたと思う。更年期のおばさんも、素直にそう思う(笑)。

もちろん、もうひとりのエマ（エマ・トンプソン）のポット夫人も、全然違和感なくて、オドロキ。さすがです！