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[コメント] マクベス(1971/米)

シェイクスピアとの微妙なバランスをとりながら所々ポランスキーが自己主張出来る題材。原作と監督との相性のよさを感じる。
モモ★ラッチ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この映画には印象的なシーンが多い。怪しげな魔女たち、それにかかる霧、寂れた荒野の不気味さ、予言に怯えるマクベスとそれを誑(たぶら)かすマクベス夫人、生々しいほど赤い血、期待通りのシェイクスピアがここにある。

登場人物の心境をモノローグで語らせる手法はローレンス・オリビエの『ハムレット』以来目新しさはないが、彼が手を汚した後に見る悪夢に監督らしさが見受けられる。特に二度目に魔女たちに会いに行く場面。あの場面にポランスキー印が満ち満ちている。そしてあのシーンを撮りたいがために彼がこれを題材にしたのだなと推測できる。

マクベスのキャスティングも絶妙だ。僕はオーソン・ウェルズのマクベスを観たことがあるが、魔女の予言に怯える点のリアリティはジョン・フィンチの方が数段上だ。

同じ「マクベス」を題材にした映画で黒澤明監督の『蜘蛛巣城』があるが、マクベス夫人の描写はあちらの方が優れているが、全体的にはこちらを取りたい。

シェイクスピアは今では古典といわれ、名セリフの宝庫の筆頭としての存在だが、おそらく当時は衝撃的な作家だったのではないかと思う。そんな衝撃を現代に、という意気込みが伺える。そしてシェイクスピアが未だに古典の中にあって退屈さを感じないのは、彼の戯曲の本質が極めて普遍的なものだからだろう。人間存在において避けては通れない妬み、嫉妬、欲望、不信、裏切り…それは隠そうと思えば思うほど大きな塊となって自分に跳ね返ってくる存在、いくら自己を正当化しようとも一度それに取り付かれてしまったらよほど意志頑丈な人間でないと流されてしまう厄介なものだ。

(評価:★5)

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