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ぽんしゅうさんのコメント: 更新順

★5ショーイング・アップ(2022/米)そんなものにかまっていられないのだろう。リジー(ミシェル・ウィリアムズ)の衣服はルーズで野暮ったい。所在なげに立ち尽くす寸胴体型の後ろ姿から、ああこの人は善い人に違いないという気配が漂ってくる。こういう真面目で不器用な人ってとても人間的だ。 [review][投票(1)]
★4ファースト・カウ(2019/米)冒頭、大きな船がゆっくりと左から現れ画面の右へ消えていく。映画が終わったときこれは川を下れなかった若者の物語だったことに気づく。心優しき料理人と野心に溢れた移民中国人。二人にとって人生最大の出来事の痕跡が開拓史のなかの小さな物語として記される。[投票]
★2吸血鬼(1932/独=仏)オーバーアクトを排し挙動や表情で感情を語らないところは脱サイレントだがトーキーとしての音声の主張は最小限に止められる。幻想映像で語りきるのかと思えば過剰な文字で展開を説明する。イリュージョン作品としても怪奇もの映画としても成立しておらずもどかし。 [review][投票]
★3笑いのカイブツ(2023/日)のっけから異様なテンションで岡山天音が突っ走り、そこに被る思わせぶりな効果音や音楽がさらに過剰でギクシャするが、やがてツチヤという男の病的なまでの「世のなか」との相いれなさに(同情はしないが)感心している自分に気づく。とは言え、実に不愉快な奴だ。 [review][投票]
★4ガートルード(1964/デンマーク)交わらない拒絶と懇願の視線。接近し離反しまた接近する導線。心情を象徴する空間の明暗。歌手、詩人、政治家、ピアノ弾き。それぞれの方程式に導き出された「愛」の解は一致しない。この女が求める愛は俗っぽくもあるが、流れた時間はやがて「愛」を超越してしまう。 [review][投票]
★3ミカエル(1924/米)4年後の『裁かるるジャンヌ』が被写体の顔(感情)と身体(動作)を駆使したアグレッシブなサイレントだったのとは対照的に閉鎖空間(屋内)と老の執着(内心)と若の奔放(行動)を見つめることで愛欲と支配欲が織りなす耽美の残酷さを描こうとした新即物主義的映画にみえた。[投票]
★4枯れ葉(2023/フィンランド=独)解雇、怪我、紛失。身から出た錆か男の不運が続く。解雇、倒産、アル中嫌い。立ち直れそうでいて女の不運も続く。そんな二人の不器用な「出会い」もまた奇跡のように続く。富で愛は買えないが境遇は愛を育むのだ。カウリスマキのささやかで上品なプロレタリア映画。[投票(2)]
★2野生のなまはげ(2016/日)“野生のなまはげ”という発想と、その造形が抜群に面白い。なのにコメディ演出がありきたりで、悪い意味でのB級コントの域に甘んじて、自主製作の自虐感を漂わせてしまい残念。結果、ラストショットに込めたであろう作者の思いが伝わってこないのがもどかしい。[投票]
★4ハッピー・オールド・イヤー(2019/タイ)前に進みたいという向上心は彼女の美徳であり、必ずやり遂げるという実行力は人としての強み。でも裏を返せば、それはエゴの追求であり融通の効かなさ。「物」の処分という即物的なテーマが、いつしか「人」の係り合いという心情の綾に連なっていく語り口が上手い。 [review][投票]
★3PERFECT DAYS(2023/日=独)孤独を「強さ」に変えてしまった男を描いて秀逸なのに何も心に響いてこない。あの変な形や色をした公共トイレのせいだろうか。視覚的に主人公と対等に扱われる日常の中の「非日常的異物」は物語からリアルさを奪ったうえファンタジーとしての昇華も妨げていないか。 [review][投票(2)]
★3NO選挙,NO LIFE(2023/日)畠山氏の人物ドキュメンタリーでありつつ、その肩越しに見える泡沫候補者を通して選挙の「常習性」に迫るという二重構造を持ちながら、登場する候補者の人数も時間も限定的にならざるを得ない参院選東京選挙区パートは、やはり焦点が定まらないもどかしさを感じた。 [review][投票(1)]
★4街の灯(1974/日)冒頭、今年(2023年)亡くなった財津一郎が登場する。それだけで感慨に打たれてしまった。その後、いささか鼻につく堺正章のオーバーアクトを緩和させるよにコマ落としのドタバタが続く。1970年代の「違和」を抱えた三世代の悲哀を描く痛烈なポイズン喜劇。 [review][投票]
★4市子(2023/日)社会と実在と自我。例えば社会から疎外されてしまった者でも自我を持ったカタチ(姿)としてとりあえず社会に実在できる。だが、あなたは実存しないとされてしまった者のカタチ(姿)は社会から消失してしまい、存在したいという自我の欲望だけが実在することになる。 [review][投票]
★4たそがれ酒場(1955/日)舞台となる酒場の造りが面白い。木造の二階。広いフロアに飾り気のないテーブルが無造作に並ぶ。奥の中二階の張り出しにマイクとピアノ。その下あたりに常連客が陣取るカウンター。店の入り口はフロアの中ほどにあり階段をのぼってきた客はいきなりそこから現れる。 [review][投票]
★4喜劇 特出しヒモ天国(1975/日)ところは東映京都。華は日活(芹明香/絵沢萌子/中島葵)&東映(池玲子/森崎由紀)混成の裸体美女。そんな据え膳をご当地野郎(山城新伍/川谷拓三/川地民夫)と在野の芸達者(藤原釜足/下条アトム/殿山泰司)が引っ掻きまわす。 [review][投票]
★4ほかげ(2023/日)ブラックホールの底から絞り出されるような女(趣里)の声音は希望を絶たれた怨念の響きのようだ。飽和点に達した怒りを抱えた男(森山未來)の呆けた彷徨は虚無と紙一重。澄んだ瞳でそんな惨状を見つめる少年(塚尾桜雅)の心には何が映っているのだろう。 [review][投票(1)]
★4正欲(2023/日)分かり合えない、分かってもらえないという話しが分かりやすく語られる。ただし物語のなかの彼らは分かり合えたのか、いまだ分かり合えていないのか、それは分からない。人は自分のことだけで精一杯なのだ、ということは分かった。まさに正しい欲についての正論。 [review][投票(4)]
★3ゴジラ-1.0(2023/日)しっくりこないなと思っていたら、これ会話のリズムとセリフ回しやプロットの進行もまるでアニメ。生身の役者が作りモノの挙動をするので「死ねなかった者」の物語が全然頭に入ってこない。今どきの大衆受けを狙うのはいいけど、ここまでアニメにおもねらなくても。 [review][投票(4)]
★4アブノーマル(1993/豪=伊)世界は毒ガスで汚染されているという比喩はまんざら嘘ではない。バビー(ニコラス・ホープ)は初めて出会う事象(常識/不寛容/習慣)や言葉(気遣い/暴言/嘲り)の断片を反復することで、祝祭的パンキーサウンドにのせた絶叫で世間を触発し中途半端な良心を嗤う。 [review][投票]
★3モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン(2022/米)12年間、精神病棟に閉じ込められた末に他者を操る能力と自由を得たアジア系移民が米南部の町に放たれるという思惑ありげな設定に期待するも、キャラクターは類型的で話もスカスカ。いざ超能力発揮シーンに流れる陳腐なステレオタイプなサウンドエフェクトに苦笑する。 [review][投票]