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ぽんしゅうさんのコメント: 投票数順

★4パーマネント野ばら(2010/日)不運を不幸にしないすべを知っている、いや、そう見えないように振舞うすべが身についてしまった女たちの話である。幼なじみの三人や、野ばらの女主人と常連のオバハンたちが、もしも強く逞しく見えたとしたら、それはため込まれた「切なさ」の逆照射のせいなのだ。[投票(3)]
★4ビッグ・リボウスキ(1998/米)フロンティア精神の吹き溜まり、LAに巣くうMr.アメリカどもの至って真面目で手前勝手な自己主張。動かぬピンが相手ならどうにかなったろうに、デュード(ジェフ・ブリッジズ)とウォルター(ジョン・グッドマン)のドタバタは、人の心が読めないあの国の縮図。[投票(3)]
★4行きずりの街(2010/日)暴力装置としての窪塚の軽佻と菅田の忠誠、サトエリの女くさいインモラルぶりと杉本のやさぐれ感、女と母を生きた江波が滲ます秘愛の凄み。仲村の空疎と小西の濃密が融解してゆく道程をピンポイントで補完する役者たちが魅力的。丸山、阪本、仙元のベストマッチ。[投票(3)]
★4乱暴と待機(2010/日)浅野のボケと小池のツッコミが地平を離れて宙を舞い、美波の過剰な質量と山田の下世話な軽薄は地べたを這いずりまわる。冨永昌敬が仕掛ける、時空、次元、入り乱れての痴話喧嘩は重層的でスリリングだが、計算の範囲を突き抜ける「破壊」なしでの前進は肩透かし。[投票(3)]
★3悪人(2010/日)和解ではなく破壊を選択してしまう男の話しである。警察署の前で葛藤する二人を打つ豪雨。父娘の再会を濡らす冷たい雨。笠松則通が写す人を分かつ雨が美しく切ない。現代の閉塞と酷薄を精緻、かつ直裁に編んだ脚本も好いが、生真面目さがいささか堅苦しくもある。 [review][投票(3)]
★4キャタピラー(2010/日)「夫」と「芋虫」と「神」、すなわち生活と戦争と国家の素の姿を、ひとりの男に見い出さなければならなくなった女の、混乱と覚悟と悟りの話である。寺島しのぶは、そんな女の心情の起伏をほとんど完璧に演じ、若松孝二はそれをあまさず引き受けている。 [review][投票(3)]
★4シルビアのいる街で(2007/スペイン=仏)いさかか偏執的ですらある「顔」のコラージュとでも言うべきガラスへの映り込みや、行き交う人々や路面電車が発する自然音への執着に唯一無二の独自性を感じる。カフェテリアの混沌が生むスリルと期待感。青年が目的を喪失した後の女たち「顔」の圧倒的主張。 [review][投票(3)]
★5ペルシャ猫を誰も知らない(2009/イラン)挑発的な趣向や表現があるわけでなく、音楽だってペルシャ語のラップやヘビメタというめずらしさはあっても基本的には欧米の借り物だ。この手の込んだPVのような映画の価値は、その存在が「毒」とみなされる状況が解消されると同時に消失してしまうという矛盾にある。 [review][投票(3)]
★4ソルト(2010/米)アンジェリーナ・ジョリーは憑かれたような表情で、連打される運動のためのアイディアと一体化し、一瞬たりとも留まることなく映画内時間を駆け抜ける。物語ではなく肉体が生む高揚は、あのバスター・キートンが撒き散らしていた原初的映画の快楽と同質のもの。[投票(3)]
★4ぼくのエリ 200歳の少女(2008/スウェーデン)少年オスカーが抱いた恋心に、はたしてエリはいかなる心情で応えたのだろうか。いや、そもそもエリに心など見い出そうとすること自体が、エリを理解していないということだろうか。恐怖のその先にある悲しみまでをも見すえた、実に切ないヴァンパイア映画だ。 [review][投票(3)]
★4インセプション(2010/米)日常を襲う唐突な銃撃と追撃、不安と呼応するかのような空間の歪み、風雪に閉ざされた要塞の美しき威容、想いの重圧に耐え切れず崩れ落ちる人工建造物。展開の巧みさもさること舞台としての夢(心)を具現化する造形が見事。そして、傷心むき出しの純粋恋愛映画。 [review][投票(3)]
★4孤高のメス(2010/日)何にも毒されぬ清らかさに満ちている。当麻(堤真一)は職務への、浪子(夏川結衣)は想いへの、武井(余貴美子)は願いへの従順を貫く。偉業への挑戦は爽快を生むが、職務や思いへの忠実さには清廉が滲む。そして、本当に賞賛すべきことの本質が垣間見える。 [review][投票(3)]
★3ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女(2009/スウェーデン=デンマーク=独)一瞬たりとも気をそらさぬ強制力の効いたハリウッド演出に慣らされた目には、悠然とかまえたオーソドックスなミステリの語り口が心地よい。とは言え、ドラゴン・タトゥー女は、もっとエキセントリックであって欲しかった。ノオミ・ラパスが生真面目に演じすぎ。[投票(3)]
★3渇き(2009/韓国)チャヌク一流のエネルギッシュな語り口は相変わらず圧巻だが、アレもコレもと闇雲に繰り出される演出アイディアが物語に有機的に機能せず、異形として復活した吸血鬼の苦悩と、背徳の罪を重ねる聖職者の苦悩が中途半端なまま交わりも対立もせず垂れ流されただけ。 [review][投票(3)]
★3ゴールデンスランバー(2010/日)序盤のミステリアスかつ、有無を言わさぬ青柳(堺雅人)の巻き込まれ方が素晴しく一気に期待が高まるが、主人公の身の上が「道理」ではなく「情緒」で転がり始め、おおよそこの世の出来事とは思えぬ優しさが物語をリードする。この優しさが「今」の気分なのか。 [review][投票(3)]
★3アバター(2009/米)良く言えば古今東西の歴史上の侵略の普遍的愚かさ、悪く言えば相も変らぬ武力には武力をの安直な情緒的ヒロイズム話しを、3時間近く飽きさせることなく、とりあえずしらっと見せきってしまうキャメロンの力技。こういう見世物映画もありだろうが、しかし疲れた。 [review][投票(3)]
★4雪之丞変化(1963/日)まさに大衆娯楽にして前衛。長谷川、若尾の艶、中村、柳の醜、山本の不協美という芸を、キャメラ、音楽、美術といった技で揺さぶり、暗闇でしっぽり包み込む。60年代初頭、市川崑はシネスコの使いこなしにおいて、間違いなく世界の最先端にあった監督の一人だ。 [review][投票(3)]
★4アンナと過ごした4日間(2008/ポーランド=仏)何もない男、レオンの欲望なき(いや、自ら肉欲を封印した)愛。アンナへと彼を駆り立てるものは、肉欲から分離されたいびつな愛欲という欲望であるという倒錯。巧みに制御された音響と映像が、救いから見放された男の、醜悪と、滑稽と、残酷の境界を曖昧にする。[投票(3)]
★4ひゃくはち(2008/日)ヒーローを描くには巧みな嘘の積み重ねが必要だが、等身大の主人公に息を吹き込み、彼らの思いを物語として語るには、地道で丁寧な本心のトレースが重要だということを森監督はよく知っている。夢が生む感動はいずれさめるが、本音が伝える感動は心と身にしみる。 [review][投票(3)]
★3愛を読むひと(2008/米=独)自らの恥を傷として抱え込むように閉じこもり、歳月をつむいだ女と男の沈鬱が実に丹念に描かれる。だが、その停滞の遍歴にもまして、私の心を打ったのは、収容所生活で地獄を体験した少女が数十年後に見せた、情も理屈も超越したクールな強固さだった。 [review][投票(3)]