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[コメント] 女体(1969/日)

冒頭のシーンで、その女は人間ではなく獣であることが暗示される。ただし女は野性の猛獣ではなく、人の加護を求めつつ飼い主の心をもてあそぶ牝猫だ。同類の画家(川津祐介)から解き放たれた牝猫が、中庸な戦中派男(岡田英次)のペットに治まるはずもない。
ぽんしゅう

リアリズムを超越した増村保造の“女”を、まさに人間の女を捨てた浅丘ルリ子が発情するように狂演する。そんな発情し続ける牝猫の次の標的が、戦後高度成長のフェロモンを発散する男(伊藤孝雄)へ行きつくのは時代の必然なのだ。谷崎潤一郎的マゾヒズムに悶える男(岡田)の哀れ。増村は“そんな男”への鎮魂を、牝猫の行きつくであろう結末に暗示する。

増村の隠れた最高傑作ではないだろうか。

(評価:★5)

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