息子（広田雅裕）は言った、「母さんは思い込みが激しすぎる。だから肝心なモノが見えていない」と。母（小泉今日子）に見えていないモノとは息子の言葉としてそのまま意を解せば、家庭の虚構を見抜き愛情の欠落感の中で暮らす夫や娘、息子ということだろう。

しかし私には、自分を育てた母親（大楠道代）には愛情のかけらもなかったのだというのは実は思い込みであり、母（小泉今日子）が見失っているのは自分自身である、と映画が主張しているようにも見えた。もし、そうであるのなら、それもまた底知れる根深さを持った恐怖であるのだが。

ミーナ（ソニン）は言った。「隠し事がない生活なんて、壁のないラブホテルの部屋のようだ」と。では、ラブホテルの部屋へ逃げ込むように救いを求めた夫や娘、息子の思いは、母の誕生日をともに祝うことで解決へと向かったのだろうか。

テーブルの花の色が「白」に変わっただけで、家族の思いは開放へと向かうのだろうか。面白い映画に違いはないが、最後の最後に「やり直しは、繰り返し」という呪文の持つ重みへの回答をはぐらかしてはいないか。