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[コメント] 県庁の星(2005/日)

予想どおりの話しを2時間見ても退屈しないとうのは、決して失望はしなかったと言う点でそれなりに良いことなのだが、映画として面白いかと聞かれて素直にうなずけないところに、無難さだけでは越えられない積年の映画ファンとしての私の意地の壁があるのです。
ぽんしゅう

日々、視聴率という数字競争の中でもまれているテレビ界出身の監督たちが作る映画は、どれもみなウケのツボを心得た百戦錬磨の巧みさを感じさせます。想像していた挫折と再生の話しが予定どおり語られるだけなのに、観客の集中力を途切れさせず、最後にはこれまた予定どおりの量の感動をちゃんと与える本作の西谷弘監督の安定した手腕もまた見事なものです。

この数年、星護(笑いの大学)、河毛俊作(星になった少年)、村上正典(電車男)ら、テレビ演出家たちによって、その業界育ち特有の大衆的安定性で観客を引きつけるテレ画とでも呼びたくなる新たなジャンルが日本映画界に着実に開拓されつつあるように見えます。その安定性というのはテレビ演出家ならではのオリジナリティであり、興行成績という観点で日本映画を考えると、この種の映画が増えるのは決して悪いことではないと私は思い始めています。

このテレ画(勝手にそう呼びます)には、今まで映画に疎遠だった人たちの足を劇場に向けさせる力が確かにあります。客が増えれば、テレ画の製作数もおのずと増えてくるでしょう。この種のテレビ的予定調和を由とした作品が、あまり好きではなかった私もその存在と影響力を認めない分けにはいきません。ただ、私にも映画ファンとしての意地があります。映画館まで足を運んで、この程度の面白さでは満足いたしません。まだまだテレ画にはテレビ的定型を打ち破り、映画的な興奮を満喫させてくれるだけの質としての魅力を感じません。

しかし、量の増加は必ず質の向上を生み出します。そして質の向上には、観客と作品が互いに切磋琢磨する時間が必要です。近い将来、テレ画の中から今までの日本映画界になかったようなオリジナルな快作や傑作が誕生することを私は期待しています。

ふれるのが最後になりましたが、傲慢さで自己を武装したエリート公務員が人の輪の中へと開放され、柔和さという優しい武器を手に入れていくさまを、身体と表情でまさに体現して見せた織田裕二は好演でした。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)takamari[*] TOMIMORI[*] つゆしらず[*] 24[*] きわ[*] sawa:38[*]

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