コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 犬神家の一族(2006/日)

顔面たるんだ65歳・石坂の金田一も、91歳・市川翁から見れば所詮は何時までたっても若造で、相対的年齢観は一応合っているのだと無理やり自分に言いきかせてみたところで、さすがに入れ歯ガタつく77歳・加藤署長はつらい。世にも奇怪パラドックス・ムービー。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







見る前から不安だった。超級の話題作であった76年版を、自らそっくりそのままリメイクしたという06年版のいったい何を、何処を、市川崑は見ろというのだろう。そして、不安は的中した。決して「前作に比べて云々」という感想はダサイので書くまいと思っていたのだが、それは無理だ。この映画、監督自身が前作と比べろと言っているようにしか見えない。それが正しい鑑賞法のようですね。

まずは、終戦直後にもかかわらず、さすが財を極めた犬神家に育っただけはあると思わせる大女・松嶋(珠世)。足元ふらつかせながら果敢にお姫様ダッコを敢行し、その苦行に耐え抜いた池内(佐智)には惜しみない拍手を送りたい。さらに、松島珠世が奥菜(小夜子)と対峙したデコボコショットのなんとシュールなことよ。私は島田陽子は好みじゃないが、まだ76年版の方が好き。

好きと言えば、76年・草笛(梅子)の我を忘れて唖然、憮然、猛然で怒り心頭ド迫力の狂乱ぶりが最高に好きなのだが、萬田(梅子)も近所の怖いオバちゃん程度には健闘はするものの、姉たちの下で鬱屈して育ち、さらには財産どころか子供まで亡くし猛女へと化す草笛梅子の爆発ぶりには遠く及ばず軍配は76年版。

健闘と言えば富司(松子)。文字通りの鉄面皮ぶりは76年・高峰(松子)に勝るとも劣らず、近年大活躍の娘寺島しのぶのデカイ顔を牽制するかのように、「見なさい!これが母よ!女優よ!」とばかり実子菊之助(佐清)を従えての厚顔ぶりが実にいい。さすがの高峰松子も血しぶき浴びて思わず目を閉じてた(記憶違いならゴメン)が、そこは修羅場を潜り抜けた元緋牡丹お竜の富司松子。顔面シャワー何のそのは、見事であった。

まあ、その他は五十歩百歩。スピード感もなければ、破綻もなし。重厚感もなければ、冒険もなし。これだけ文句を連ねておいて何で3点も付けるかというと、私はお年寄りに優しいから、ではなくて、やっぱり市川崑が好きだから。老いて益々のご活躍を期待申し上げます。ご自愛ください。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (7 人)鎌倉ルパン tkcrows[*] はしぼそがらす[*] TOMIMORI[*] TOBBY[*] ペペロンチーノ[*] sawa:38[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。