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[コメント] ひゃくはち(2008/日)

ヒーローを描くには巧みな嘘の積み重ねが必要だが、等身大の主人公に息を吹き込み、彼らの思いを物語として語るには、地道で丁寧な本心のトレースが重要だということを森監督はよく知っている。夢が生む感動はいずれさめるが、本音が伝える感動は心と身にしみる。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







頂上を夢見て、それを目指すことは成長の糧であり青春の特権でもある。しかし、まるで何かに憑かれたように一心に費やされる愚直な情熱は、ときに他人には無駄な努力に見える。いや、事実そうであることの方が多い。愚直さが決して成功を約束しないことを、私のような凡人であればあるほどよく知っている。

だからこそ、雅人(斎藤嘉樹)とノブ(中村蒼)がボロボロになりながら、やっと手に入れた身の丈ぎりぎりの夢(ではなく、二人にとって現実なのだ)に感動するのだ。それは、本音にまみれた愚直な夢(=現実)だ。この若者の「無駄な努力」の物語は、青春の終焉とともに、彼らのような愚直さを失ってしまった私(たち)のよな凡人のなれのはてに、素直な勇気と感動を与えてくれる。彼らの愚直さと「無駄な努力」が放つ輝きが心にも身にもしみる。

(評価:★4)

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