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[コメント] 八月の濡れた砂(1971/日)

コレのどこがいいの?って、みんなに聞かれる・・・しょうがないじゃん、好きなんだから。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







60年代後半から70年代の初めにかけて、藤田敏八はこの作品や『バージン・ブルース』・『赤い鳥逃げた?』で非常に強い何かを発していた。それは状況への“ポジティブな意志”といったようなものであった。

「八月の濡れた砂」のラストシーン近く。真っ青な海原を漂流する白いヨット。それは、あたかも母親の胎内で羊水に浮かぶ胎児。その真っ赤に塗られた灼熱のヨットの船内から、紺碧の外の世界に発射されるライフル弾は“性的なカタルシス”であるとともに、“閉じられた状況”を打ち破ろうとする強い意志表示であった。

70年代後半に登場する『帰らざる日々』・『十八歳、海へ』には、この“ポシティブな意志”はもう見受けられない。橋浦方人監督の『星空のマリオネット』に代表されるように、藤田の青春映画の中でも登場人物の“死”が描かれるようになる。そこには“閉じられた状況”に押しつぶされていく青春しかなかった。

私は藤田敏八の“ポジティブな意志”がきっと好きだったのだ。

それを確認するために20代の私は、何度も何度も映画館に足を運び「八月の濡れた砂」を繰り返し観つづけていたのだろう。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)disjunctive[*] ケネス 甘崎庵[*] ペペロンチーノ[*] ナム太郎[*] 町田[*] sawa:38[*]

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