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[コメント] ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う(2010/日)

相変わらずの石井隆の導入部の力技に胸高鳴るも、ガラスの靴をはかされた汚れたシンデレラ嬢の純情ぶりに魅力無く、怨嗟の感情の振り幅も類型的で突き抜けず、入れ込む男(竹中直人)の心情が上滑りする。さらに、堕ちてこそ石井のはず。半端な癒しなど見苦しい。
ぽんしゅう

たかが東風万智子に懐柔される程度の絶望などを石井が描こうとは、唖然である。石井隆、64歳。竹中直人、54歳。この日和見が、壮年から老年へと向かう男の一瞬の妄想だとしても、なさけなく、一抹の寂しさが漂う。石井隆には一生涯にわたって「永遠の愛と業」を追い続ける作家でいて欲しい。

さらに、近年の石井映画のヒロインを演じる女優たちの魅力のなさはいかんともしがたく、佐藤寛子もまた井上晴美大竹しのぶに完全に喰われ、その存在感の薄さたるや致命的。汚れたシンデレラとして男を魅了するには、やはり力不足であった。石井映画の復権は、地力ある主演女優が発掘できるか否かにかかっているのだ。

一方、大竹しのぶが発散する「悪」が実に魅力的だった。この母親の悪意は、生まれつきのワルのそれではなく、長年にわたり辛酸をなめ尽くした結果として後天的に備わった「悪」であり、諦観の末の居直りと自棄をともなった悲しさにあふれていた。怪演大竹しのぶ、恐るべしである。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)DSCH MSRkb[*] 煽尼采 movableinferno

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