コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ブルーバレンタイン(2010/米)

女との未来を描けない男と、男の愛情を確信できない女。欠落を抱えた若者が、互いに理解し合ったような、そんな気がした瞬間に放つまばゆい輝き。それは正に存在の発火であり、花火の閃光のように行く手の闇を消し去ると同時に、二人の目を一瞬くらませたのだ。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







しかたあるまい。何かが始まるとき、人はその終わりなど想像しないものだ。まして、その始まりが本人たちも知らぬ間に負ってしまった心の傷を癒す一筋の光明のように見えたのなら。しかし、その光は本当に見えたのか、見えたような気がしただけなのか、あまりの多幸感に目がくらみ、存在しないものを見たと錯覚しただけなのか。

我々、観客に真相は分らない。きっと、ディーン(ライアン・ゴスリング)にも、シンディ(ミシェル・ウィリアム)にも分らないだろう。何故なら彼と彼女が、その光を放った発光体そのものなのだから。それは彼らの長い人生において、花火のように炸裂した一瞬の出来事だった。少なからず恋愛とはそういうものだろう。

デレク・シアンフランスは、愛情が生まれる瞬間の輝きと、関係の終わりを告げる沈鬱と空疎な爆発を、スクリーン上に堰を切ったような感情の発露としてぶちまける。せめぎ合う歓喜と諦観。誕生と終焉の交錯が切ない。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)DSCH 赤い戦車[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。