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[コメント] 無言歌(2010/香港=仏=ベルギー)

追い詰められ、すべてを奪われた人々の無念が描かれる。彼らは権力に抗うわけでもなく、体制の矛盾や理不尽を告発するわけではない。まして思想を論じたり矛先を党や個人に向けることもない。彼らには、もはや時代や状況を恨む力など残っていない。究極の奪取だ。
ぽんしゅう

財産も職業もプライドも奪われ、精神的にも肉体的にも「無の状態」におとしめられた人々の無念。延々と描かれるこの「無の状態」の惨状が、見る者に何らかの普遍的メッセージを発信したかどうか。そして、何かを打開する糸口として機能するのかどうか。作品の意義は認めるが、このワン・ビン監督の受け身ともいえるアプローチ方法が有効かどうかは疑問。

現実に起きた事象の細部をことさら忠実に、かつ擬似ドキュメンタリーとして真摯な誇張を加えつつ延々と再現するこの演出方法は、事象に対するアプローチとしていささかネガティブに見えてしまった。結局、倫理的告発も、悲しみの共有にも至っていないように思う。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] セント[*]

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