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[コメント] ダークナイト ライジング(2012/米=英)

合理性を欠いた「悪」こそが真の脅威であり、それへの対峙が、仮面の欺瞞に苦悩するヒロイズムという同時代性を生むのは前作で実証済み。安易に理由付けされ、お決りの因縁話に矮小化された「悪」は、ほどほどの合点を提示するだけで「今」への共感など生まない。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







そこそこ頭は使うようだが、最後はもっぱら腕力だよりのベイン(トム・ハーディ)の「悪」は、かつてどこかで目にしたあまたのケダモノ人間の範疇を脱しないオールドファッション。繰り出す策略も既成の怪人・悪人の域を出ず、大した凄みもなく結局「何を」手に入れようが、いずれ使い古された正義の前に屈してしまうだろうという予定調和感を垂れ流し、彼をとりまく輩もまたしかり。

さらに、悪の対抗軸として逆ベクトルからバットマン(クリスチャン・ベール)の心情(=観客の思い)を揺さぶるはずの、市警本部長(ゲイリー・オールドマン)の秘めたる苦悩や、熱血警官(ジョゼフ・ゴードン・レヴィット)の真摯な憤り、さらにセリーナ(アン・ハサウェイ)の立ち居地の揺れなど、人を巡る心理描写がおざなりで、周辺人物たちが観客の心を現実世界に留めるべくアンカーの役を果せず物語の絵空事感を助長する。

真摯、かつ不吉な「ハリウッド娯楽大作」だった『ダークナイト』は、いつかどこかで観た凡庸な「ハリウッド娯楽大作」に逆戻りして、あっけなく無邪気に〈rise〉してしまった。

(評価:★3)

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