[コメント] アルゴ(2012/米)
宗教や文化の齟齬、石油利権、偏見、感情の対立などといった面倒な要素は周到に排除され、純度100%に濾過された「サスペンス」だけがCIA工作員とともに、パーレビとホメイニの狭間をスルリとすり抜ける。まあ確かに、歴史の娯楽化もまた映画の使命なのだが・・・
英米がさんざんパーレビ王政を利用したことは棚に上げ、アメリカ大使館に押し寄せるイランの学生や民兵の怒り、体制の非道を訴えるチャドル姿の女性の涙の原因は、すべてパーレビの悪政のせいにされる。70年代、テヘランの街を、ミニスカート姿で颯爽と闊歩するイラン女性たちの写真を見たことがある。あの時代のイランは「ある種の思想」を持った人たちにとっては自由の国だったはずだ。
一方、現在のアメリカは心底イランに手を焼いている。その元凶を作ったホメイニの不敵な肖像写真は、再三映し出されるものの、そこはそれ、余計なチャチャや突っ込みは入れない行儀のよさ。今、多くのイラン人映画監督が活動を制限され国を追われている状況を思うと、無邪気に「さすがハリウッド。猿の惑星バンザイ!」などと言ってしまうことに、少し後ろめたさを感じたりするのです。
あんまり、面倒なことをゴチャゴチャ言わないのが、この映画の楽しみ方だというのは分っているのですが・・・・・。まあ、そんな感想を持ちました。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (3 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。