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[コメント] 横道世之介(2012/日)

世之介が、人いちばい優しい男だった訳ではないのだ。まだ何も成し得ていない時期の、曖昧で、心細く、不定型だった自分を、今、客観視できるようになり、余分な感情や記憶が削ぎ落とされ世之介の存在が純化されたのだ。時間には、そんな力があるということだ。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画は世之介(高良健吾)の物語のようでいて実は違う。物語の主役は、一転希望から不安のどん底に落ちた一平(池松壮亮)や、自分自身を受け入れ身の置き所を模索しているであろう加藤(綾野剛)であり、漠然とした将来に向けて虚飾のなかを彷徨う千春(伊藤歩)や、無意識のうちに過大な庇護から抜け出そうとあがく祥子(吉高由里子)たちだ。もっと言えば、そんな彼や彼女たちに流れた十数年の時間についての話なのだ。

しかし、その十数年の間に起こったであろう出来事は何も描かれない。逆説的にいえば、事象が何も描かれないからこそ、そこに「時間」の映画が成立するのだ。「時間」は過去に向っては流れない。これは思い出ではなく、これから訪れるであろう未来へと続く「時間」の話なのだ。だから、青春時代の懊悩とともにあった「あのとき」の世之介の思い出が純化され、そのまま映画の爽快へと転化するのだ。グラフィティ映画の傑作。

(評価:★5)

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