コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] それでも夜は明ける(2013/米)

本来、人は自由であるのだから「自由黒人」という身分が存在すること自体が矛盾している。12年の奴隷生活が、ソロモンに気づかせたのはそのことだ。社会に染みついてしまった「差別」は、する側にも、させれる側にも、その存在が見えなくなっているという厄介。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







平穏に暮らしていた者が、ある日突然、身に覚えのない理由で自由を奪われ(投獄され)、理不尽で過酷な生活を強いられる。これは「長期拘束もの」映画の典型的な展開であり、本作もこの構成を踏襲しているという点で「お約束」の映画である。

たいていの「長期拘束もの」の主人公は「一般市民」→「囚人」→「一般市民」という運命をたどりお約束の「平穏」にたどり着く。しかし、ソロモン(キウェテル・イジョフォー)がたどるのは、「自由黒人」→「奴隷」→「自由黒人」であり、差別のスパイラルを一周したに過ぎない。お約束の先にあったのは「矛盾」である。本来、この「矛盾」の自覚こそがソロモンの物語として描かれるべき、最も重要なテーマのはずである。

映画のエンディングで、ソロモンは人生の後半を奴隷解放運動に費やしたとナレーションで語られる。だとすれば、映画は、矛盾の存在を自覚した彼の「その後の生き方」にこそ時間をさかなければならなかったはずだ。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (4 人)t3b[*] jollyjoker[*] プロキオン14[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。