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[コメント] フォックスキャッチャー(2014/米)

デュポン(S・カレル)の猫背に抑圧された者の鬱屈が滲む。母によって飼いならされた馬の従順さに、彼は自らの姿を重ねていたのだろう。求めたものは解放であり、最も恐れたのも解放だったのだ。だから彼が撃ったのは解放を希求する心。すなわち彼は自殺したのだ。
ぽんしゅう

かつての美貌の跡を仮面のように面貌に深く刻んだ老母(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)の無言の圧力と、馬でキツネを狩るようにレスラーを飼いならして空疎を満たそうとした男(スティーヴ・カレル)の不穏が充満し、もともと不安に満ちた目をしていたマーク(チャニング・テイタム)の視線は、ついに焦点を失い宙を泳ぎ、経験に裏打ちされていたはずの兄デイブ(マーク・ラファロ)の自信は揺らぎ実践に固執し平静を保とうとする。

言葉ではなく、存在が人の心を支配してゆくストイックな演出が無意識の悪意をあぶり出し、すんでのところで嫌悪をはらんだホラーの域に達するところ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)jollyjoker[*]

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