コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] わたしたち(2015/韓国)

仲間はずれにされた少女は、不安な顔を“する”のではなく不安な顔に“なる”。“する”より“なる”の方が切ない。彼女は、何が原因で、何故こんなこんなことが起きているのか分からないのだから。友をとり戻そうとする話でありつつ、意志の誕生を見つめる物語。
ぽんしゅう

3人の少女が登場し、互いが生み出す不安定な関係に全員が振り回される。このバランスの乱れは、誤解を恐れずに書けば悪意のイジメから無邪気な喧嘩まで、子供の世界では起こるべくして起こる「問題」であり「思い出」でもあるのだろう。

関係の中心に位置するボラ(イ・ソヨン)は、良し悪しは別にして自我に根差した意志を(当人も気づかぬうちに)発散し続ける。一方、仲間はずれにされるソン(チェ・スイン)や、転校生のジア(ソル・へイン)は(幼さのせいだろうか)状況を受け入れることでしか自らの立ち位置を作りだすことができない。

人と人の関係は、意志と意志の調整のうえに成立する。そんな(大人でも悩む)関係性づくりの機微を、少女たちは今まさに楽しみや悲しみ、喜びや怒りを通じて、体験しているのだ。

ラストシーンが見事だ。隣に不安げにたたずむ少女への、ほんのささやかな一人の少女の意思表示は、無限の可能性の入口となって、いつしか必ずやもう一人の少女へも伝播するだろう。ユン・ガウン監督の少女たちを見つめる繊細で上品な姿勢が、少女たちの、すなわちすべての人々の未来の存在を担保している。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] 寒山拾得[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。