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[コメント] 夜間もやってる保育園(2017/日)

保育という行為は「待機児童ゼロ」などという政治スローガンとして為政者の人気取りに利用されるような軽々しい問題ではなく、人が幸福な社会生活を営んでいくための根幹として、義務教育制度と並立されるべき、人権と自由のための制度なのだということを知った。
ぽんしゅう

さまざまな課題や興味深い事象が浮かび上がる。

認定夜間保育園が全国に80ヶ所しかないという現実。子供を預ける保育園が見つからないために職場に復帰できない女性保育士(片野園長の娘!)という滑稽な皮肉。夜間保育園から夜間学童保育所へという、ごく自然な“進学(進育?)”の流れ。

自分の末子が、自分の娘の子供(ようは孫)と同じ年齢だという、筋金入りのホステスさん。たどたどしい日本語で、異国での就学後の多動癖の息子の生活を案じる中国人の母心。懸命に日本社会のなかに自分たちの居場所を作ろうとするタイ人一家の逞しさ。

さらには、3人の息子を故郷に残し、今の夫と駆け落ちしてこの仕事を始めたというエイビイシイ保育園園長の保育に対する決意と悔悟。

残念なのはそんな、制度と人間の関係の歪みや葛藤が掘り下げられることなく総花的に放置されること。どの課題や事象でもかまわないので、作者が拾い集めた状況と被写体にさらに踏み込み肉薄したとき、始めてこのドキュメンタリー映画は成就して強靭な力を得るだろう。続編に期待します。

(評価:★3)

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