[コメント] モリのいる場所(2017/日)
唐突なナンセンスギャグも、ベタな“謎の男”も、苦笑いでやりすごせるチャーミングな小品。老画家(山崎努)は決して奇人や変人ではないし偏屈者でもない。マネージャーのように立ち回る常識人の妻(樹木希林)は守るべきものが何であるかをわきまえている。
守るべきものとは「自然体」だ。
決して無理をせず、思うがままに時を過ごし、日々をおくる。そんな生活を続けることがどんなに難しいか。世間のしがらみは決して「自然体」で過ごすことを許してはくれない。「自然体」でいること、あるいは、いようとするだけで、たちまち摩擦が生じることを、私たちは経験上知っていいる。
当然、老夫婦の生活は世間の常識とずいぶんズレているようにみえる。でも、そのズレの原因は、老夫婦の側にあるのではなく、世間(私たち)のしがらみの深さに起因しているのだ。
老夫婦の、おだやかな抵抗を、みんないつしか自然に受け入れてしまうのは、世間(私たち)の誰もが彼らのような「自然体」に憧れているからだろう。だから、ふたりの肩の力の抜けた生活ぶりは、ファンタジーのようにチャーミングなのだ。
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