[コメント] 斬、(2018/日)
巻頭、炎のなか「鉄」の塊りが「刀」へと変貌するさまが描かれる。そして、無機としての「鉄」に注がれる塚本晋也のフェティシズム(物神崇拝)が、殺傷という有機の極限行為の象徴である「刀」に託され、神経を逆なでする音の洪水とともに狂ったように放たれる。
この「殺傷」を巡る葛藤劇を観終わったとき、多大な疲労感が残るのは、倫理と反倫理という理性の範囲ではなく、エロスとタナトスという精神の域で、肉体(人間)のカタチを破壊しようとしているからだと思う。生身を裂き破壊する「刀」とは反肉体、すなわち非人間が可視化されたカタチなのだ。
無機と有機を強引に越境する、久しぶりに塚本晋也らしい映画だった。
〔余談〕照明スタッフに坂本あゆみ監督の名前が・・・。そうでした、彼女、塚本組の人でした。貴重な異才。早く次回作を撮って欲しいものです。お待ちしています。
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