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[コメント] 岬の兄妹(2018/日)

二人が選んだ意図せざる生活は、世間の見えざる「圧」が生み出す不本意な“引きこもり”のようにみえた。本人たちが不本意であるぶん、二人はなりふりかまわず本能を金銭に替えて世間と関わりを持つ。真里子は普通ならざる生活を通して普通を実感したのだろう。
ぽんしゅう

高尚な思想や、鋭い告発がある分けではない。この映画にあるのは、何に遠慮することもなく、語りたい話を見せたいカタチで撮ってしまう飾り気や遠慮のなさだ。妥協や譲歩のない“やり方”は、ものごとの本質を突きつける。丸裸でむき出しの物語を観終わったあと、理想や建てまえではなく、本来私たちが語るべき“人権”とは何であったのだろうか、と考えてしまった。

こんなに迷いも、てらいもなく規制を越境する馬力のある映画は近年類がなく、その濃厚さや図太さは1960年代の今村昌平若松孝二作品を思い出させた。

あと、あたかもきわどいドキュメンタリーのように、熱演する兄妹(松浦祐也/和田光沙)を、風景に溶け込ませた美術、衣装、撮影が「あの町で起きた出来事」を語るような説得力を生んでたことも忘れずに記しておきます。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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