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[コメント] 空母いぶき(2019/日)

恨み骨髄、まったく手加減しない敵の攻撃にも「戦争しないと、どうしようもなくないですか」とは決して言えないので「“戦闘”だけは、とりあえずしないと、どうしようもなくないですか」と言いかえてOKにしておかないと、どうしようもなくないですか、という話。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







戦争と“戦闘”は違うのだ!・・・まあ確かに、そうなんですが・・・

ちょっと話はそれますが、つい先日(2019年5月24日)、衆議院議員の野田聖子さんがインタビューに応えて、こんな意味の話しをされているのを見かけました。政治で保守とリベラルという分け方があるけど、私はロマンチストかリアリストかの違いだと思っています。天皇が尊敬されるのは何千年も続く男系男子だからというのはロマン。現状で天皇家を次ぐ人が3人しかいないなんて、私はリアルじゃないと思う。思想ではなく、攻め方の違いです。

で、この映画も政治家も自衛官も、ロマンチストとリアリストの二派に分かれての攻防が繰り広げられるのだな、と思って観てました。実際、導入部はその気配が充分でした。

ところが、いつのまにやら対立軸はあやふやになり、俺もお前も思いは同じ。悪い奴などいやしない!とみんな一斉にロマンチストになったかと思うと、今度は内側(日本)も外側(謎の敵)も周囲(世界)も、まあいろいろ事情はあるのだから、ひとつここは「貸し」と「借り」ということで、と唐突にリアリストぶりを発揮してけりをつけてしまうなんざ、実にお見事!

なるほど、やっかいな問題はロマンとリアルを上手に使い分けて先送りするに限る、というのが妥当かつ穏当な見識というものなのですね。でもやっぱり映画としては(例えば『世界大戦争』や『日本沈没』(73))みたいに)もう少し立ち位置をはっきりさせて“根性”をみせてくれれば、★4つにも、2つにも出来るのですが・・・・。

戦闘シーンなんて結構面白かったのに、などと言いながら、政治家でも自衛官でもないフツーの国民の私は(彼らの先送りのおかげで)今日も呑気に過ごせるという「仕掛け」を、制作者たちが意図したかどうかわかりませんが示唆してくれたという点で、実に「良い」映画だと思いました。

(評価:★3)

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