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[コメント] よこがお(2019/日)

市子(筒井真理子)の“よこがお”は柔和に輝いている。基子(市川実日子)の“かお”は見つめる側として正面から見据えられる。リサ(筒井)の“よこがお”は放心したように虚空に向けられる。そんな印象を受けるのは、交わらない感情が「視線」に託さているからだ。
ぽんしゅう

交わらない恋情と憎悪は、女ふたりで目撃し、後に女と男が回想する性愛への接近の試みとしての「サイの勃起」の逸話にも静的に象徴され、さらに動的には“先を急ぐ者”とその想いに“追いつけない者”を分断し、後に決して接触が叶わない“転落者”と“成就者”の空間の壁として描かれる「赤信号の横断歩道」に仮託される。

欧州映画みたいだなあと思いながら観ていた。例えばイザベル・ユペールのために撮られたような一連の映画。あるいはオリヴィエ・アサイヤスの軋轢や、アスガー・ファルハディの齟齬を主題にしたサスペンス映画のような。監督が躊躇なく、ひとりの女優にその映画のすべてを託したとき撮れる映画ということなのだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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