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[コメント] ルース・エドガー(2019/米)

ほほ笑みと真顔のあいだに隠されたルース(ケルヴィン・ハリソン・Jr.)の得体の知れなさが恐ろしく、これはポリティカル・ホラーとでも呼ぶ新たな恐怖映画かと期待が膨らむも、やがて、そんな自分のなかに潜んでいた差別意識に気づかされ、大いに恥じ入る。
ぽんしゅう

前半に暗示される主人公ルースの“不気味さ”を私はホラーだと感じてしまった。つまり私は作中の養父母(ティム・ロス/ナオミ・ワッツ)や女性教師(オクタヴィア・スペンサー)と、同じ立ち位置からルースに視線を向けていたのだ。

やがて映画は私の「期待」を、ほらみたことかと嘲笑う。ポリティカル・コレクトネスの尻馬に乗る安易さ。上から目線の「ほどこし」や「みちびき」に潜む新たな差別。私のなかに潜むそんな欺瞞をエドガーは、ものの見事に暴いてしまう。

不当な支配という“枷”を否定することで、その正当性が生み出す新たな支配を肯定してしまうという“罠”。個人の尊厳こそが大切なのだと、したり顔で言いながら、なんの根拠もなく「名誉白人」にでもなったつもりでいる自分に、私は気づかされたのでした。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ペンクロフ[*] 3819695[*] シーチキン[*]

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