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[コメント] なぜ君は総理大臣になれないのか(2020/日)

何年もまえのことだが、本作にも登場する政治ジャーナリストが、民主党の有望な若手として小川淳也の名をTVで口にしたのを覚えている。その後、彼の顔をメディアでみかけることはなかったが、なぜか名前だけは覚えていて、何度が新聞の政治欄のベタ記事でみかけた。
ぽんしゅう

最後にみたのは、2017年に小池百合子が「民進党」に仕掛けたあの合流騒動のときだった。すったもんだのすえに決まった「希望の党」の公認候補者を知らせる小さな記事のなかに小川淳也の名があった。ああ、終わったな、と思った。

政治信条に関して、私は小川に共感するところが多い。おそらく監督の大島新も同じスタンスのようだ。ところが、小川は政治家に向いていないのではないかと感じ始めた大島新は、意地悪いくらいクールに“むいてなさ”をあぶり出していく。

普通の政治家は、代々の地盤、看板、鞄を引き継ぎ、地元への利益誘導のために一族総出で活動するのに、小川は地元の一般家庭の育ちで父母、妻娘たちは“しかたなく”必死で選挙運動を手伝い、本人は地元もそこそこに未来の社会と国の在り方を語る。なんだか青臭いインテリの被虐的な政治道楽にみえなくもない。

普通の政治家は、弱点を突かれたときは何が何でも抗弁し、矛盾を指摘されたときは論点を巧みにそらし、断言をさけながらも、あたかも断言するように空疎な「自信」で相手を煙にまくが、小川は「そうですよねぇ」とあっさり弱点や矛盾を認めて迷いに迷ったすえに断言をさける。まるで「迷い」を言い分けにしているようにもみえる。

普通の政治家は、党内の有力者を担ぎ、ときに道理や理屈に合わなくとも、そのコマに徹しながら権力のヒエラルキーを登ろうとするが、小川は「そうゆうの、ぜんぜん関心ないんですよ」と言いながら、おそらく本人も気づかずに仲間(前原、玉木、細野、枝野、蓮舫、玄葉、小池)の悪口ととられかねない言葉を口にする。トップを目指すと言いながら何の戦略も戦術もみえない。

なるほど小川は“政治家”に向いていないかもしれない。じゃあ私は、どんな政治家を求めているのだろうか。大島新があぶり出した小川淳也の反転としての「将来よりも目先」、「合意より切り捨て」、「権力のための権力者」を良しとする“普通の政治家”じゃなっかたはずなのは確かなのだが。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)甘崎庵[*] jollyjoker ペンクロフ[*]

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