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[コメント] 星の子(2020/日)

「霊水の力」を信じる非現実的な“大人”である両親が娘である自分に注いだ無心の愛情は、彼女にとってはまぎれもない現実なのだ。そんな非現実的な現実を生きる少女の、どこにでもある理想のイケメン教師への恋心とは、本人も気づかないSOSだったのかもしれない。
ぽんしゅう

ただ、確かに、そのSOSの先にある「現実」といわれる社会が、すべての人々にとって「幸福」な世界なのかどうかは分からない。信じる力が強固であればあるほど視野は狭まり、醜く過酷な世界が視界から消えていくのは確かだろう。自分に理解できなもを、即座に断定的に否定してしまう教師(岡田将生)もまた同じことだ。あの一家が見上げた満天の星空の神々しさとは、欲望に支配された現実社会の陰画だったのかもしれない。すると物販に支えられた信仰という矛盾もまた、むべなるかなということだ。

否応なくもうひとつの現実社会、すなわち、もうひとつの“大人”の世界の入り口に立たされ、信じることの正しさと危うさを知った少女の戸惑いのリアルを、少しふっくらとした芦田愛菜の思春期顔の丸いほっぺたのリアルが担保する。愛菜ちゃんをスクリーンで見るのは『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(2014)以来。当時10歳で映画初主演の彼女に、私は次のような感想を書き残した。

「その圧倒的な存在感は他の子役たちのなかにあって、ある種の異物感さえ漂わせる。この異物感は『悲しき口笛』や『東京キッド』で子役時代の美空ひばりを見たときに感じたものに似ている。−(中略)−美空ひばりが11歳で発散していた異物感が天才芸人のオーラだったとしたなら、芦田愛菜のそれは溢れ出す女優の感性の片鱗なのだろう。」

今回の6年ぶりの主演映で、あのとき“異物”だった子役は、大人の女優へと脱皮しつつある姿をみせてくれました。テレビだけじゃなくて映画にもどんどん出て欲しいです。

余談です。確かによく見ると岡田将生は若い頃のエドワード・ファーロングに似てますね。斜め横顔、限定ですが。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] おーい粗茶[*] 水那岐[*]

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