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[コメント] スパイの妻(2020/日)

男の正義と女の恋慕の間に生じた溝を、感情の勢いで飛び越えようとする女と、ゲーム的術数で埋めようとする男。女の半径3メートルの痴話嫉妬が、ビジネス仕様の世界主義に端を発した優男の野望によって、図らずも帝国主義と対峙する大胆不敵なエンタメサスペンス。
ぽんしゅう

PASSION』(08)や『ハッピーアワー』(18)で日常のなかの観念の怪を描いて才を放ったハッタリ映画作家滝口竜介の今回の脚本は、大戦前夜という極めて特殊かつ限定的な状況を得て“帝国主義”という具体と向き合う。そんな生真面目な娯楽仕様を黒沢清もまた気負うことなく手練れたサスペンス演出のエッセンスのみを使って程よくサーポート。互いにハッタリを封印した行儀の良い師弟コラボ。

語尾まできっぱり言い切る聡子(蒼井優)の明晰な口跡が、感情的にしろ意思的にしろ内心の有りようを明確化して心地よく、映画の背骨となって物語の骨格を支える。小津映画の戦前女性たちの歯切れの良い気品を思い出す。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得[*] 水那岐[*]

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