[コメント] 聖なる犯罪者(2019/ポーランド=仏)
重そうな瞼をしたダニエル(バルトシュ・ビィエレニア)の目が雄弁だ。その眼差しは何かから身を守ろうとしているかのように不安げだが人を拒絶しているようにはみえない。この若者は良きにつけ悪しきにつけ、常に相手と真剣に対峙しているということだろう。
ダニエルはなりゆきで神父になってしまった。だから彼の目に戸惑いはあっても故意に人をだまそうという意思を感じない。彼が罪を犯した経緯は語られない。人を殺めたのもまた限りなく偶然に近い“神の悪戯”の結果だったのかもしれない。
無自覚な悪意を抱えてしまっていた村人たちが、そんな彼に惹かれつつ自らの“悪意”に気づき戸惑い、焦り、反発すのは必然だった。真剣に相手と対峙するということは、自分の内心と向き合うということだとダニエルもまた、このときに気づいてたのだろう。
本当に“人を欺いているのは誰だ”という形骸化した宗教や不寛容な人心への警告であるとともに、裏返せば人は自身のために他者はもちろん自分をも欺く生き物だという戒め。
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