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[コメント] すばらしき世界(2021/日)

今回の西川美和作品はずいぶんと優しい。私は監督の一筋縄ではいかない意地悪さが好きだったのでちょと拍子抜け。役所広司さんのお芝居が魅力的なので2時間あきずに楽しめましたが、この三上という男、なんのことはないハード仕様の車寅次郎ですね。
ぽんしゅう

今でこそ「男はつらいよ」シリーズのフーテンの寅は、人情味あふれるさすらい人として理想化されていますが第一作(69)から数作までは少し違った印象でした。数十年ぶりに帰郷したテキヤ(ヤクザ)の寅次郎を、とら屋(当時)の一家は暖かく迎えます。ところが寅次郎と世間の常識のギャップがすぐに露呈して騒動を引き起こします。

根は優しく気の良いお調子者だが自分の規範に合わないものには否定的。激しやすく、いったん対立すると言葉よりも行動が優先し暴力が唯一の解決手段となる。当時のタコ社長との喧嘩は結構マジで壮絶です。そんな面倒臭い男が故郷に求めた安らぎ(社会復帰)が、直情的な言動と職業に対する偏見によって阻まれる。ね、今回の三上(役所広司)にそっくりでしょ。

1968年の『男はつらいよ』第一作の寅次郎は、今見るとその身勝手さや暴力性に嫌悪感を抱く人がいてもおかしくないほど非常識な男でした。こんな勝手な奴は嫌いだと言った人を私は知っています。山田洋次は、この厄介者の物語を、彼の周りに決して裏切らない理解者たちを配置しながら、キャラクターの毒を徐々に薄めて稀代の人情喜劇シリーズにしてしまいました。

で、本作はそんな人情ドラマのコンテクストを、人心の葛藤に迫る分けでも、社会の不寛容を突くわけでもなく、さらに演出のキレもなく、中途半端に焼き直した西川美和監督らしくないステレオタイプな映画に見えてしまいました。

なんだか「男はつらいよ」の話にばかりになってしまいました。★三つはすべて渥美清に勝るとも劣らない役所さんの“奮闘努力の甲斐”にいに。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)緑雨[*] ゑぎ[*] おーい粗茶[*]

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