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[コメント] 親愛なる同志たちへ(2020/露)

権威主義の内側に組み込まれた者は主体性なき優等生に成り下がる。そのことに気づくのに市民が払う代償の大きさ。それを目の当たりにする実直な党下級職員の失意の深さ。「大丈夫。これから良くなるから・・・」そうつぶやく彼女に微塵の悪意もないのがまた悲しい。
ぽんしゅう

酒を煽りながらご都合しか語らぬ党中央の幹部たち。その教条的な傲慢ぶりに、半端なエリート意識で右往左往する中間管理者たちの滑稽。強固な中央集権制の末端で責任が行き場を失い宙に浮く。そんなさまが皮肉交じり描かれる。

党組織に身を置き、特権を享受する地方委員リューダ(ユリア・ヴィソツカヤ)の強者信奉を単純には責められない。それは第二次大戦の犠牲者でもあるシングルマザーの彼女が、持ち前の勤勉実直さで生活のために「これから良くなる・・・」と念じながら手に入れたスターリン信奉の恩恵なのだから。

舞台となるノボチェルカックスというロシア南西部の都市は、現在のウクライナ東部の中心地マリウポリと国境をはさんで200キロしか離れていない。東京なら静岡の、大阪なら岡山の先くらいの距離だろうか。かつてのソ連の工業の中心地帯で、ロシア革命時には独立をめざして共産軍と戦った軍事共同体コサックの地だ。

急遽、今年(2022年3月)日本で支援上映されたウクライナ映画『アトランティス』と『リフレクション』。やはり今年、日本公開となったジョージア映画『金の糸』。ドイツ占領下のベラルーシを描いた『炎628』。国境線が引き直されるたびに、その地に暮らす人たちの心の傷も複雑になってきたのだろう。いや「いくのだろう」と現在進行形で書くべきですね。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] jollyjoker

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