[コメント] ブワナ・トシの歌(1965/日)
芝居の意味を解しているかさえ定かでないアフリカの民を相手に、30代半ば、絶頂期の渥美清の“芝居”を呼応させ“お話し”をでっちあげたこの疑似ドラマには、創作の自由と楽しさが溢れている。何を語るかより、何が撮れたかにしか興味がない羽仁進の真骨頂。
鑑賞したフィルムは退色が激しくまったく色彩が残っていなかった。もしも、オリジナルのカラー映像で鑑賞していたら、まったく違った印象になっていたような気がする。
何の作為もない天然色のアフリカの光景のなかで、この作為満点の“感動ドラマ”が繰り広げられるギャップは、きっと不思議で刺激的な映像空間を生んでいたに違いない。
羽仁進の、そんな悪童のような仕掛けを想像すると、わくわくしてくるのだ。このフィルムの状態の悪さは、一時代を築いた映像クリエーターにとって犯罪的ですらある。残念でならない。
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