[コメント] 白夜(1971/仏=伊)
ビスコンティの『白夜』は雪の冷気が伝わってくる硬質な造形映画だったが、ブレッソンのこれは、テーブルの下で絡み合う手や、部屋を往来する男女の気配、娘の裸体が放つ生々しいエロスの艶やかさが、人の息吹や雑踏の喧騒にまみれて湿気を放つ夜の街頭映画だ。
とりわけ、軽快なギターをメインに路上ミュージシャンたちが奏でる70年代風音楽と、まばゆい光を放ちながら闇に包まれた川面を滑るように進む遊覧船は、人々の理性の奥に秘められた、夜行性という淫靡な本性の象徴のようで実に官能的だった。
余談だが、この遊覧船が放つ柔らかな光の輝きは、デジタル撮影では出せないのではないだろか。こんなに魅惑的な35ミリフィルムの美しさをスクリーンで堪能したのは久しぶりだ。つくづく、デジタルに洗脳されてしまっていたことに気づく。
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