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[コメント] 銭ゲバ(1970/日)

わずか90分に詰め込まれた情報の多さを考えると、強引な語りや舌足らずを責めるより、ベビーフェイス唐十郎(すでに30歳)の非現実的な存在感を駆使し、話の肝である“醜くも哀しい悪”を夢幻のごとく担保して、綱渡り的に破綻を回避した演出の剛腕を評価する。
ぽんしゅう

後半(赤ん坊登場以降)の「銭」を得ることと「命」を奪うことが同化した自らの精神構造にさいなまれる風太郎(唐十郎)の葛藤ぶりは圧巻。原作に負うところもあるのだろうが通底する、1970年代を迎えるにあたって沸点に達した経済成長(大阪万博!)や顕在化する公害問題(作中でも触れられる)の激化への不安と批判が色濃くにじむ。

あと70年代初頭のアングラ臭プンプンの女優さんの存在感に圧倒されます。淫靡さと高慢さを同時に発散する下衆娘と紙一重のお嬢様緑魔子や、生真面目さと可憐さに不自然な重さが加わりお荷物化した令嬢横山リエ。なかでも(私はスクリーンで動く姿を初めて見たのですが)伝説のピンク女優にして作家の鈴木いづみさんが、そこに居るだけで醸し出す重量感に驚きました。その質量は芝居や、まして体型ではなく、彼女の精神性(生来)に根ざしているように感しました。

緑魔子、26歳。横山リエ、22歳。鈴木いづみ、21歳。この存在感、今(2018年)の漂白、殺菌されたような同世代の女優さんたちに望むべくもありません。まあ、時代ですね。時代ですよ。

映画は続編の臭いをプンプンさせて終わります。完結編が観たかった。斜陽にあえぐ日本映画界のどん底が見えた1970年。これもまた、望むべくもない無いものねだり。時代ですね。

(評価:★4)

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