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[コメント] 青の炎(2003/日)

秀一(二宮和也)も、そして彼が対峙するはずの大人の世界も、中途半端に分かり易いので物語に厚みがなく、紀子(松浦亜弥)が放った視線の矢は標的を見失い虚空を彷徨う。人間を分かったふりした底の浅い脚本が好演する二人の足を引っ張った。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







秀一(二宮和也)は、母と妹との平穏な生活を壊されたくなくて曽根(山本寛斎)を殺した分けじゃないんでしょう。それじゃあんまり底が浅すぎる。人なんか殺しませんよね。何故か、ダメ男・曽根を拒否することが出来ず肉体まで許してしまう母友子(秋吉久美子)を見て、曽根に嫉妬したからじゃないんですか。それなら殺したくなる気持ちも分からないではないんですが・・・。

だったら余命のない曽根が、死期まで娘と暮らしたいから家に居座ったなんていうウェットで中途半端な理由は必要ないですよ。あくまで秀一から、母を女として奪う傲慢な略奪者のままでよかった。現に曽根は、強姦まがいのことをして母を犯しているのだから癌だろうと何だろう関係ないじゃないですか。

もっと良くないのは母・友子のキャラクター。生真面目な普通の主婦などではなく、母の愛情と女の恋情の間で悩み揺れるか、それこそ子供が見えなくなって男に走る女であって欲しかった。『誰も知らない』のYOUのように。まして秋吉久美子を起用するのなら、その方が絶対に良いですよ。(話はそれますが、40歳過ぎてから秋吉さん良くないです。演出家が望むのか、本人の希望なのか知りませんが変に真面目な役が多くて。彼女には20代のころの、今で言う不思議ちゃんがそのままオバサンになったような役の方が絶対に似合います)

そういう、17歳の少年の理解を超えて、しかも自分のアイデンティティを奪いかねない、どうしようもない大人の男と女の関係が対極にあってこそ、二宮和也が好演する秀一とそれを見据えるが紀子(松浦亜弥)の存在が物語の中で生きてくると思うんですが。でないと、せっかくの二人の好演が浮いてしまって・・・。よくできたアイドル映画の域でいいんですかね。天下の蜷川幸雄も、何度チャレンジしても映画は撮れない、てっことになちゃいますよ。

古いですかね、私の感覚。今は、悪い人や分けのわからん奴の出てこない、すっきりと筋の通った映画の方がいいですかね。でも人間って自分のことも相手のことも良く分からないもので、だから人間が描かれた映画は共感や感動を生むんだと思いますけどね。17歳の犯罪なんて、本当は分かりもしないのに知ったかぶりで映画作るから、最期は辻褄合わせて主人公に自殺させなきゃ収まらなくなったんじゃないの。今時、自殺なんて。その方が古臭いと思うんですけど・・・ねぇ、蜷川さん。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)TOMIMORI[*] 緑雨[*]

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