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[コメント] ロックンロールミシン(2002/日)

背中に生えた小さな羽根は、最後にはミシンの揺れと共にパタパタと嬉しそうに羽ばたいていた。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







行定勲の映画はほとんどが前半部でイライラする。そしてそのイライラは話が進むに従って心地よいノスタルジーに変わっていくのだ。その過程は私にとってとても貴重なものであり、だからこそ行定の映画を好んで観てしまうのだと思う。

この映画も前半部、本当に学生サークル並の3人に惹かれて会社まで辞めてしまう主人公・ケンジにイライラした。津田演じる上司と同じ気持ちだった。どうせこの関係は崩壊して終わるんでしょ、始終そう思っていた。

それが実際そうなってしまった時に、私は「それ見たことか!」とは思わなかったのだ。彼らと関わった短い期間、仕事を辞めてまで関わった期間。それに対し無駄や無意味を感じなかったから。

「ストロボラッシュ」の3人に対しバカらしい、甘ったれてる、非現実的だと軽蔑すら覚えて眺めていた私だったけど、そんなバカらしさの中にも絶対に何かが潜んでいるのだ。

最後は奇跡的に(というか現実では絶対にありえない)会社にカムバックしたケンジ。そこでの昼休みの何気ないやり取りが非常に印象に残る。声を発して大きく2度頷く上司に深い包容力を感じた。大袈裟かも知れないが津田演じる上司がいたからこそ、この映画は良質なものになったのだと思う。「ストロボラッシュ」の3人を眺める主人公。その主人公を眺める上司。その図式がとても良かった。

ラスト、今あるものを壊し、新しく歩き始めた凌一。その背中に刻まれた羽根のタトゥがミシンの音に合わせて小さく羽ばたいていた。そのラストシーンがとても印象的だった。

(評価:★4)

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