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[コメント] ラヴェンダーの咲く庭で(2004/英)

移り変わる四季と同じ温度を保っていた老姉妹二人の心に、ある日突然火が灯され、そしてまたある日突然かき消されてしまう。それでも二人の心に残ったぬくもり。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とにかくジュディ・デンチマギー・スミスの演技が素晴らしい。冒頭の海岸シーンだけで、二人がどれほど仲の良い姉妹なのかという事がしっかりと伝わってきたし、あの数分だけで観る者に二人の絆を印象づけるのは本当に素晴らしい演技だと思いました。違う役者が演じていたら恐らく"冒頭でもっと二人の仲の良さを描いてもらわないと、後にギクシャクする二人が活きてこない"と思っていたに違いないです。二人の性格もよく表れていたし、あの冒頭シーンは本当に素晴らしかったと思います。(なんだか久しぶりに『ムッソリーニとお茶を』を再見したくもなりました。)

青年が加わってからの老姉妹の心の機微も、繊細ながらも印象が強く、未だ置かれた事のない立場にも係わらず、二人に深く感情移入してしまいました。

また画家の女性にしても、不可解な言動はあったにしろ、その存在がとても効果的に感じました。この女性の存在で、作品の起承転結がとてもしっかりしたものになっており、退屈になりがちな作品をそうでないものにしていたと思います。

こちらのコメントでは(特に女性陣の)青年の傍若無人っぷりが鼻につくという意見が多く目につき、それを読んで私は初めて「そう言われれば確かにそうだなー」と思ったぐらいで、青年の行動についてもそこまで不信感を抱かずに最後まで鑑賞しました。それは恐らく私がアーシュラ(ジュディ・デンチ)に感情移入しすぎていて、まさに恋は盲目状態になっていたんだと思います。特に青年がアーシュラの膝に頭を乗せるシーンと青年が髪を切ってもらっているシーンは秀逸だと思いました。膝枕シーンではハッと胸を押さえ、そして恐る恐る髪を撫でるアーシュラの手に、これ以上ない乙女を感じたし、髪を切ってもらっている青年の後ろ姿をアーシュラ目線で撮るカメラに、私自身の胸の鼓動も高まりました。そして皆が去った後、落ちている髪をそっと拾うアーシュラに思わず涙。それは陽だまりのような日々がいつか終わりを迎えるという事を暗に察しているアーシュラの心の表れであり、老いた風貌のその奥に可憐な少女を垣間見る瞬間でもありました。

そしてそんな妹を嫌悪するどころか、暖かく見守りそして優しく包み込む姉の包容力にもひどく胸を打たれました。

老姉妹の前にある日突然現れ、二人の心に火を灯し、そしてまたその火を消して去って行った青年の存在は、二人の心にかけがえのない日々として、ぬくもりのようにいつまでも残るのでしょう。

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07.05.17 記

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)草月 わっこ[*]

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