まず、主人公二人の置かれた境遇があまりに特異で、感情移入が難しい。二人の心情を察する事が困難で、物語に入り込みにくい。この日常的ではない設定でまず面食らってしまいました。『春の日は過ぎゆく』を観た時も、主人公二人の心情を察するのが難しかったんですが、この作品の場合は他にもエピソードが用意されていたので、ストーリーそのものに抑揚がありました。今作『四月の雪』ではそういった他のエピソードも全くなく、始終主人公二人の目線で話が進んでいくので、独善的に感じたし、閉鎖的にも感じました。映像は前作同様とても印象的で、なんでもない風景でもとても美しく映えるのですが（たとえば老人がゲートボールのようなものをしているシーンとか）、どことなく息苦しさを感じました。その息苦しさは計算されていたものなのかは分かりませんが、時折シーンに織り込まれる、開け放した病室の窓から吹く風がとても印象的ではありました。そういった、いつまでも見ていたい衝動に駆られるシーンもいくつかあったので、ストーリーが単調で独善的だったのが、非常に勿体無い。もう一つ何かエピソードを絡めてくれればもう少し奥行きのある映画に仕上がったんじゃないかと思います。

それから、演技をするペ・ヨンジュンというのを初めて見たのですが、彼の存在そのものが結構目につく。画面に彼が映される度に「あ、ペ・ヨンジュンだ」と思ってしまい、どうしても集中出来ない。画面から本人の匂いが消えていないとでも言うんでしょうか。例えば、ジョニー・デップという俳優はとても魅力的で存在感もものすごく大きいんですが、彼の出演する映画からジョニー・デップ自らの匂いがした事がない。ペ・ヨンジュンも鼻につくような演技はしていないので、本人自らの魅力をそのままに、匂いを消して演技が出来るようになればもっといい役者さんになるのでは、と思います。

今作はどちらかと言えば、私の求めているホ・ジノらしさが感じられない映画でしたが、彼の描く愛は、今回も赦しに満ちていました。

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05.10.07　記